ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(Once Upon a Time In Hollywood)/2019

作品情報

キャスト

  • レオナルド・ディカプリオ(リック・ダルトン役)
  • ブラッド・ピット(クリフ・ブース役)
  • マーゴット・ロビー(シャロン・テート役)
  • エミール・ハーシュ(ジェイ・シブリング役)
  • マーガレット・クアリー(プッシーキャット役)
  • ティモシー・オリファント(ジェームズ・ステイシー役)
  • ジュリア・バターズ(トルーディ・フレイザー役)
  • オースティン・バトラー(テックス役)
  • ダコタ・ファニング(スクィーキー役)
  • ブルース・ダーン(ジョージ・スパーン役)
  • ルーク・ペリー(ウェイン・モウンダー役)
  • ダミアン・ルイス(スティーブ・マックイーン役)
  • アル・パチーノ(マーヴィン・シュワーズ役)

あらすじ(ネタバレなし)

1969年のハリウッド。
かつて西部劇で人気を博した俳優リック・ダルトンは、時代の変化に戸惑いながら再起を目指す。
彼を支えるのは専属スタントマンで親友のクリフ・ブース。
映画業界の光と影、そして隣人シャロン・テートとの交錯を通じて、彼らの人生は思わぬ方向へ動き出す。
タランティーノが描く「もしも」のハリウッド物語。

以下、ネタバレあり

あらすじ(ネタバレあり)

🟩起:落ち目の俳優と時代の変化

1969年のハリウッド。
かつてテレビ西部劇で人気を博した俳優リック・ダルトンは、時代の変化に取り残され、悪役やゲスト出演ばかりの仕事に苦悩していた。
彼を支えるのは、専属スタントマンで親友のクリフ・ブース。
クリフもまた、過去のトラブルから仕事が減り、トレーラーハウスで犬と暮らす日々を送っていた。

ある日、リックの隣家に映画監督ロマン・ポランスキーと女優シャロン・テート夫妻が引っ越してくる。
新時代の象徴のような彼らを見て、リックは焦燥感を募らせる。
そんな中、映画プロデューサーからイタリア映画への出演を勧められたリックは、プライドを捨てて再起を図る決意をする。

🟨承:それぞれの道と奇妙な出会い

リックはイタリアの西部劇に出演し、俳優としての自信を取り戻していく。
一方、クリフはヒッチハイク中のヒッピー少女プッシーキャットを車に乗せ、かつて撮影で訪れたスパーン映画牧場へ向かう。
そこは今やチャールズ・マンソンを崇拝するヒッピー集団の拠点となっていた。
クリフは牧場主ジョージ・スパーンに会おうとするが、彼は失明し、記憶も混濁していた。

ヒッピーたちの異様な雰囲気に不信感を抱いたクリフは、牧場を後にする。
半年後、リックはイタリアでの成功を経て帰国し、新たな妻フランチェスカと共に生活を始めるが、経済的事情からクリフとの関係を解消する決断を迫られる。

🟥転:運命の夜と襲撃の予兆

1969年8月9日深夜。
リックとクリフは最後の夜を共に過ごし、酔った勢いで帰宅する。
クリフはLSD入りのタバコを吸い、愛犬ブランディと散歩へ。

その頃、マンソン・ファミリーのメンバー4人が車でシエロ・ドライブに現れる。
彼らは本来シャロン・テート邸を襲撃する予定だったが、リックに罵倒されたことで標的を変更し、リック邸へ向かう。
クリフが帰宅すると、ヒッピーたちが侵入。
銃を向けられるが、ブランディの攻撃とクリフの反撃で次々と制圧される。
錯乱したヒッピーの一人がプールに飛び込み、マルガリータを作っていたリックは火炎放射器で彼女を焼き払う。

🟦結:書き換えられた歴史と希望の余韻

襲撃は未遂に終わり、警察が到着。
クリフは負傷しながらも搬送され、リックは事情聴取を受ける。
騒ぎを聞きつけたシャロン・テートの友人ジェイがリックに声をかけ、シャロンはリックを自宅に招き入れる。
実際の歴史ではシャロンらが殺害された事件だが、映画ではタランティーノがその悲劇を「もしも」の形で書き換えたのである。

リックは新たな人間関係と再起の兆しを感じながら、ハリウッドの新時代へと歩み出す。
映画は、過去のスターたちへのオマージュと、暴力を笑いに昇華するタランティーノ流の演出で幕を閉じる。

感想(ネタバレあり)

正直に書くと、期待値が高まりすぎていてしまい、世間で持て囃されているほどの面白さは見いだせなかった。
しかし、褒められた時に「努力してます」という返事のバリエーションをブラピから教えてもらえたので、それだけでも収穫のある映画だと言える。

この作品に出会ったキッカケは、福本伸行の「カイジ」のスピンオフ「ハンチョウ」にて出てきた「ワンスアポンアタイムインアメリカ、見てないのォ!?」というセリフだ。
上映時間は205分と3時間越えの超大作だ。
ハンチョウは「長い…タイトルも長ければ上映時間も長い…ッ!」と涙するのだが、「ワンスアポンアタイム」とPrimeVideoで検索したところ、ハリウッドが先にヒットして、ブラピが出ていたのでこちらを先に見てみた。
イン・アメリカは面白いのだろうか。

ところどころに面白さを感じるシーンはあった。
ハリウッドには…というか、アメリカにおいて俳優活動という仕事には不思議な魅力があるのだろう。
近年では「マキシーン」や「ラストナイト・イン・ソーホー」、「マルホランド・ドライブ」等、役者としての成功や、ハリウッドでの成功を夢見る映画を多数見かけるが、それほどまでに役者を翻弄させる場なのだろう。

さて、実際の映画に関して語るとする。
この映画は一言でまとめると、「もしも映画」「実はこんなだったのでは?映画」である。

ブルース・リーの対決シーンは、やはり賛否両論あるだろう。
彼は映画界で、アジア人俳優の先駆者として評価されているからこそ、あの演出は娘のシャノン・リーやファン、武術関係者から「侮辱的」「嘲笑的」と批判が殺到したらしい。
しかしタランティーノは「実際そんな感じだった」との一点張りらしく、タランティーノらしさがあふれている。

大脱走のシーンの「もしも」なんかはとても面白い。
マックイーンの顔が綺麗にディカプリオになっている。
新たにあのシーンを再現するのではなく、CGにより顔だけ綺麗に挿げ替えるのは、タランティーノの美学なんだろうなあと感じる。

ラスト15分の大事件は、ザ・タランティーノ。
そうそう、これが見たかったのよ。
最後のブラピのセリフも「努力してる」。これ、好きよ。
でも黒焦げになるまで火炎放射しなきゃならないのかな?
えげつなく感じるけど、お金持ちエリアって、イコール危ないエリアなのかもしれないな。

作品の本筋とは別で気になったのが、セリフの和訳に関してだ。
50:00頃に女性の発する「ザ・レイダーズで踊ってたと私がジム・モリソンに言いつけると思う?(“Do you think I’m gonna tell Jim Morrison you were dancing to The Raiders?”)」
というセリフ。
吹き替えでは、追加で「ドアーズでは踊れないと?」も言っている。
なんだこれ!なんという改変だ!
文化を的な皮肉が伝わりづらいがゆえの意訳なんだろうけど、翻訳家はどこまで意訳して良いのだろうか?と疑問を持った作品でもある。

✅魅力に感じたところ

  • 映画愛に満ちた「おとぎ話」
    タランティーノが描く「もしも」のハリウッドは、1969年という激動の時代を舞台に、過去のスターたちへのオマージュと郷愁に満ちている。
    シャロン・テート事件を“改変”することで、観客に優しい救済の物語を提示している。
  • 豪華キャストと演技力
    レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットの共演は圧巻。
    特にブラピはアカデミー助演男優賞を受賞。
    落ち目の俳優リックと、飄々としたスタントマン・クリフの友情が、静かに胸を打つ。
  • 映像と時代再現の完成度が高すぎる
    1960年代のロサンゼルスを忠実に再現。街並み、音楽、衣装、車など細部までこだわり抜かれている。
    実際に街を封鎖して撮影したほどの徹底ぶりで、映画ファンにはたまらない演出。

❓気になったところ

  • テンポがゆっくりで退屈に感じる人も
    前半は日常描写が中心で、事件の展開までが長く「何も起きない」と感じる人もいる。
    そして上映時間がとにかく長い。
  • ブルース・リーの描写に批判も
    クリフとの対決シーンで、ブルース・リーがやや嘲笑的に描かれており、実在の人物へのリスペクトが欠けているように感じた。
  • 物語の焦点が曖昧
    リック、クリフ、シャロン・テートの3軸が並行して描かれるため、誰が主役なのか分かりづらく見づらいと感じた。

🎥映像について

この作品は、映画愛に満ちた演出が魅力。

  • 1960年代の空気感を完璧に再現
    街並み、衣装、車、看板など細部までこだわり抜かれた美術が高く評価され、アカデミー美術賞を受賞。
  • 劇中劇の撮影シーンがリアルで没入感あり
    リックが出演する西部劇の撮影風景は、当時のテレビドラマの雰囲気を忠実に再現していて、映画内映画としても楽しむことができる。
  • ラストの襲撃シーンの演出が鮮烈
    LSDでハイになったクリフと愛犬ブランディがヒッピーを撃退する場面は、タランティーノらしい暴力美学が炸裂する名場面。

以上、「ワンスアポンアタイムインハリウッド」の感想でした。

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