作品情報
- 公開:2002年02月16日
- 上映時間:146分
- 制作:アメリカ
- 監督:デヴィッド・リンチ
- 視聴方法:U-next
キャスト
- ナオミ・ワッツ(ベティ・エルムス役)
- ローラ・ハリング(リタ役)
- アン・ミラー(ココ役)
- ジャスティン・セローア(ダム・ケシャー役)
- ダン・ヘダヤ(ヴィンチェンゾ・カスティリアーニ役)
- マーク・ペルグリノ
- ブライアン・ビーコック
- ロバート・フォスター(ハリー・マックナイト役)
- アンジェロ・バダラメンティ
- キャサリン・タウン
- メリッサ・ジョージ(カミーラ・ローズ役)
- パトリック・フィッシュラー(ダン役)
あらすじ(ネタバレなし)
記憶喪失の女性リタと女優志望のベティが出会い、リタの過去を探るミステリー。
物語は夢と現実が交錯し、後半で二人の関係や世界が一変。
成功と嫉妬、罪悪感が絡み合い、ハリウッドの光と影を描く不思議な作品。
以下、ネタバレあり
あらすじ(ネタバレあり)
🟩起:出会いと謎の始まり
ロサンゼルスの夜、マルホランド・ドライブで黒髪の女性が乗った車が事故に遭う。
彼女は記憶を失い、サンセット大通り沿いのアパートに逃げ込む。
そこへ女優志望の金髪女性ベティが訪れ、二人は出会う。
黒髪の女性は部屋にあったポスターから「リタ」と名乗り、ベティは彼女の記憶を取り戻す手助けを始める。
リタのバッグには大金と青い鍵が入っており、謎が深まる。
二人は、リタが唯一思い出した「ダイアン・セルウィン」という名前を手がかりに調査を進め、やがて死体を発見する。
女優志望のベティは映画のオーディションで圧倒的な演技を見せ、夢のような成功を掴みかける。
二人は惹かれ合い、愛を交わすが、物語は次第に不穏な空気に包まれていく。
🟨承:謎の深化と幻想の崩壊
ベティとリタは「クラブ・シレンシオ」という奇妙な劇場を訪れ、現実と幻想の境界が揺らぎ始める。
舞台では「これは録音だ」と語る司会者が登場し、音楽と感情が交錯する中、リタは青い箱を発見する。
ベティが箱を開けた瞬間、世界が一変し、ベティは姿を消す。
ここから物語は夢から現実へと移行する。
登場人物の名前や関係性が変わり、観客は混乱に陥る。
リタは売れっ子女優カミーラとなり、ベティは落ちぶれた女優ダイアンとして描かれる。
これまでの出来事は、ダイアンが現実逃避のために見ていた幻想だったことが明らかになる。
夢の中で理想化されたベティは、ダイアンの自己投影だったのだ。
🟥転:現実の暴露と崩壊
現実世界のダイアンは、かつて恋人だったカミーラに捨てられ、彼女が映画監督アダムと婚約したことに深く傷ついていた。
嫉妬と絶望に駆られたダイアンは、殺し屋にカミーラの殺害を依頼し、報酬の証として青い鍵を受け取る。
夢の中でリタが持っていた鍵は、殺人の成功を意味していた。
ダイアンは罪悪感と後悔に苛まれ、現実と妄想の境界が崩れていく。
彼女の精神は不安定になり、幻覚や記憶の断片が交錯する。
クラブ・シレンシオの司会者やウィンキーズの裏の男など、夢の象徴が現実にも侵食し、ダイアンの内面世界は崩壊寸前となる。
彼女は自分の行為と向き合えず、逃げ場を失っていく。
🟦結:破滅と静寂の終幕
罪の意識と喪失感に押し潰されたダイアンは、孤独な部屋で青い鍵を見つめながら精神的に追い詰められていく。
隣人の声、幻覚、過去の記憶が彼女を責め立て、ついに拳銃を手に取り自ら命を絶つ。
物語は静かに幕を閉じ、冒頭で登場した老夫婦の笑顔が不気味に歪みながら彼女を追い詰める幻想として現れる。
映画は、夢と現実、成功と挫折、愛と憎しみが交錯する中で、ハリウッドの光と影を描き切る。
『マルホランド・ドライブ』は、ダイアンの妄想と現実が交錯する心理劇であった。
感想(ネタバレあり)
正直、見なきゃよかった。
褒めています。
意味が分からないし気持ち悪くなった。
まるで体調が悪い時に見る悪夢を見せられているようだった。
前半の幻想的でワクワクする演出、
中盤の謎が深まり、何かが判明しても、何も分からない…余計分からなくなる。
初見では分からなかったが、2回見ると、ベティがオーディションで見せる圧巻の演技は、彼女の理想像としての輝きを象徴していることがよく分かる。
クラブ・シレンシオでの「これは録音だ」というセリフと、泣き女の歌「Llorando」が流れる場面はとても印象的で、夢の崩壊と現実への転換が爆発のように起こる瞬間だった。
後半では、ベティ=ダイアン、リタ=カミーラという現実が明かされ、一瞬混乱するが、なるほどそういう仕組みかと面白く感じた。
嫉妬と絶望に満ちたダイアンの内面が露わになり、物語は一気に逆転する。
謎だった青い箱と鍵は、夢と現実の境界の象徴だった。
夢の世界では活き活きとして素晴らしい輝きを放っていたダイアンが、現実で自ら命を絶つ結末は、ハリウッドの光と影を残酷に描き出す。
伏線の回収を拒む構造も含め、何度も観たくなる中毒性がある作品だった。
✅魅力に感じたところ
- 夢と現実の二重構造
前半は理想的な夢の世界(ベティとリタの出会い)、後半は現実(ダイアンの嫉妬と破滅)という構成が秀逸。
青い箱を開ける瞬間に世界が反転する演出は本当に圧巻! - ナオミ・ワッツの演技力
明るく希望に満ちたベティから、嫉妬と絶望に沈むダイアンへの変貌が見事。
オーディションシーンの演技は鳥肌もので、ワンカットで臨んだところも素晴らしい。 - 象徴的なシーンの数々
クラブ・シレンシオでの「これは録音だ」というセリフ、泣き女の歌「Llorando」、ウィンキーズ裏の男など、意味不明なのに強烈に印象に残る場面が多い。 - 考察の余地が無限
伏線や象徴が散りばめられていて、観るたびに新しい解釈が生まれる。
青い鍵やカウボーイの意味など、観客に「考える楽しみ」を与えてくれる。
❓気になったところ
- 物語の整合性が曖昧
伏線が回収されないまま終わる部分も多く、私は初見では「なんとなく分かったけど、結局どういう話だったの?」となった。
夢オチ的な構造に肩透かしを感じる声もある。 - 登場人物やエピソードが散漫
間抜けな殺し屋ジョー、謎の老人ローク、カウボーイなど、脈絡のないキャラが次々登場し、物語の主軸が見えづらくなる瞬間も。 - 不安を煽る演出が過剰に感じる場合がある
理不尽な恐怖や不気味な演出が続くため、苦手な人には「意味不明で怖いだけ」と感じられることもある
🎥映像について
この作品は、なによりロケーションの力を最大限に活かした美しさが魅力的。
- 夢と現実で映像のトーンが激変
前半(夢)は明るく幻想的なライティング、後半(現実)は暗く冷たい色調で構成。
映像だけで心理状態を表現しているのが秀逸。 - 青い箱と鍵の色彩演出
青は「夢と現実の境界」を象徴する色。
箱を開けると世界が反転するという演出は、視覚的にも物語的にも強烈。
※しかし、監督は「青」という色に関して特に名言していない。 - ウィンキーズ裏の男の登場シーン
序盤に昼間の明るいファミレスで語られる「恐怖の夢」が、裏手の暗がりで現実化する。
照明と構図で不安を煽る演出が秀逸。
これが、「夢である」という伏線と言えるのではないだろうか。 - カメラワークの不安定さ
手持ちカメラやゆっくりとしたズームイン・ズームアウトが多用され、観客に「何かがおかしい」「気持ちが悪い」という違和感を与える。 - リンチは脚本を俳優に完全には渡さなかった
俳優たちは自分のキャラクターの全貌を知らずに演じていたため、演技にリアルな不安や混乱が反映されている。
以上、「マルホランド・ドライブ」の感想でした。
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