ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜(The Help)/2012

4.5

作品情報

  • 公開:2012年03月31日
  • 上映時間:146分
  • 制作:アメリカ
  • 監督:テイト・テイラー
  • 視聴方法:Disney+

キャスト

  • エマ・ストーン(ユージニア・“スキーター”・フェラン役/作家志望の白人女性)
  • ヴィオラ・デイヴィス(エイビリーン役/黒人メイド)
  • オクタヴィア・スペンサー(ミニー役/エイビリーンの親友の黒人メイド)
  • ブライス・ダラス・ハワード(ヒリー役/白人上流階級の差別主義女性)
  • ジェシカ・チャステイン(シーリア・フット役/ヒリーに疎まれる白人女性)
  • アリソン・ジャネイ(シャーロット・フェラン役/スキーターの母)
  • シシー・スペイセク(ウォルターズ夫人役/ヒリーの母)
  • シシリー・タイソン(コンスタンティン役/スキーターの元メイド)
  • メアリー・スティーンバージェン(エレーン・スタイン役/出版社の編集者)
  • アンナ・キャンプ(ジョレン・フレンチ役/ヒリーの友人)

あらすじ(ネタバレなし)

1960年代のミシシッピ州。
作家志望の白人女性スキーターは、黒人メイドたちの声なき思いを記録しようと決意する。
沈黙の中に秘められた真実──それを語る勇気は、誰にあるのか。
やがて彼女たちの言葉が、街を揺るがす力になる。

以下、ネタバレあり

あらすじ(ネタバレあり)

🟩起:スキーターの帰郷と疑問

1960年代初頭、ミシシッピ州ジャクソン。
大学を卒業したユージニア・“スキーター”・フェランは、作家志望として地元紙の家庭欄で働き始める。
彼女は、裕福な白人家庭で働く黒人メイドたちが受ける差別的な扱いに疑問を抱くようになる。
特に親友エリザベスの家で働くエイビリーン・クラークの姿に心を動かされる。

町ではヒリー・ホルブルックが「黒人専用トイレ法案」を推進し、白人女性たちの間で差別意識が強まっていた。
スキーターは幼少期に世話をしてくれたメイド、コンスタンティン・ジェファーソンが母に解雇されていた事実を知り、衝撃を受ける。
スキーターは出版社の編集者エレーン・スタインと連絡を取り、黒人メイドたちの証言を集めて本にすることを決意する。
母シャーロットは娘の行動に戸惑いながらも見守る。

1964年まで約100年、実際に施行されていた「人種差別法」によると、学校、公共交通機関、医療、住宅などの施設や場所を人種別に分けること、決められていた。
それに異議を唱えることも、重罪とされていた。
スキーターはエイビリーンに協力を求め、彼女はためらいながらも証言を始める。

🟨承:メイドたちの証言

エイビリーンに続き、親友ミニー・ジャクソンも証言に加わる。
ミニーはヒリーの家でメイドとして働いていたが、嵐の日、屋外に設置された黒人用トイレではなく家の中のトイレを使用したことから、解雇された上にあらぬ噂を吹聴されていた。
孤立していたミニーだが、ヒリーに疎まれる白人女性シーリア・フットに雇われ、友情を築く。

スキーターがエレーン編集長に提出したインタビュー記事は好評だが、エイビリーンとミニーの2名だけでは足りず、あと12名は集めるべきだと言われる。
エイビリーンが31名のメイドに声をかけたが、怖がって誰も応じない。

ヒリーに紹介されたスチュアートから食事に誘われ、スキーターは交際を開始する。
一方ヒリーは、スキーターが解放に乗せたチャリティーイベント用のコート募集の記事によって、便器が集まってしまい、ヒリーはスキーターの行動に疑念を抱き始める。

ヒリーの家で働くユールメイが、指輪を盗んで質屋に出したことが分かり逮捕された。
大勢のメイドたちが本の為に証言を名乗り出た。
スキーターはそれを記録していき、町の空気が変化していくのを感じる。
ミニーは解雇された際にチョコレートパイをお詫びとして持参していたが、それには「クソくらえ」というメッセージが込められていたことをスキーターに告白した。
執筆に協力したことがバレた時の保険として掲載してほしいと申し出たが、スキーターは危険すぎると拒否した。

シーリアはミニーが作ったチョコレートパイを持ってヒリーの家を訪問するが、全員から無視される。
シーリアはヒリーが当時別れたばかりの元恋人とすぐに結婚したため、恋人を奪われたと思いシーリアを憎んでいた。
チャリティパーティでシーリアはヒリーに誤解を解こうと話したが、空回ってしまった。

スキーターは実家のメイドを29年勤めていたコンスタンティンがなぜ解雇されたのか母親に話を聞く。
話によると、名誉あるパーティを開催している際に、コンスタンティンの娘が突然訪問した。
来客者を無視した娘レイチェルの無礼かな態度が来客者である会長の逆鱗に触れ、コンスタンティンはクビになったのだという。
後日、母親は考え直してシカゴに迎えに行ったが、既にコンスタンティンは亡くなっていた。

🟥転:出版と町の反応

スキーターは証言集『ヘルプ』を出版社に送り、匿名で出版される。
本は全国的に話題となり、ジャクソンの町でも噂が広がる。
スキーターはスチュアートに本を執筆したのは自身であると告白するが、スチュアートからは激しく非難され、別れることとなった。

ヒリーは内容が自分のことだと気づき、怒りを露わにするが、ミニーが「チョコレートパイ事件」を証言に含めたことで反撃できず、思惑通り他の町の話だと言ってまわった。
町の白人女性たちは動揺し、メイドたちは不安と誇りの入り混じった感情を抱く。
スキーターは出版社からニューヨークでの仕事を提案され、町を離れることに葛藤する。
母シャーロットは娘の決断を支持し、スキーターは旅立ちを決意する。
ミニーはシーリアとの絆を深め、エイビリーンは新たな人生への一歩を考え始める。
町の空気は少しずつ変化していく。

🟦結:別れと新たな一歩

スキーターはニューヨークへ旅立ち、メイドたちに別れを告げる。
ミニーはシーリアの家で働き続け、互いに支え合う関係を築く。
スキーターの本は多くの読者に届き、メイドたちの声が社会に広がる。
エイビリーンはヒリーによって仕組まれた盗難騒ぎからエリザベスの家をクビになり、初めて自分の人生を歩み始める。
彼女は亡き息子の思い出を胸に、歩き出す。

感想(ネタバレあり)

この映画で一番のポイントはやはりチョコレートパイ。
しばらくはそんなものを食べられなくなる!(笑)

「黒人と同じトイレを使いたくない」
これは、以前鑑賞した人種差別映画「ドリーム(2017)」でも同様のシーンが出てきた。
黒人専用トイレがNASAの施設の中で1,2か所しかなく、黒人職員はいつもそのトイレのために休み時間を目いっぱいかけて用を足しに行っていたという。
この映画の舞台である1960年代から60年経った現在、黄色人種の私はそんなことを考えたことが無い。
娘が結婚しない、レズビアンなのではないかと案じ、薬草の根っこのお茶を飲んで”治そう”とする。
それも現在では「治る」云々の話ではないというのが常識だ。
現在の常識の中には、きっと60年後に非常識になっていることもあるのだろう。

エイビリーンは14歳からメイドとして仕事をしていた。
そして、彼女たちは楽しんでやりがいを持って仕事をしていた。
「なぜメイドになったの?」というスキーターの質問に、エイビリーンは「自分の母親もメイドだった、祖母も奴隷だったから」と答えた。
生まれる前から選択肢がなく、メイドになるのが当然・メイドにしかなれないと思いこんでしまう地獄は想像に難しくない。

最初は面倒くさい母親、冷酷な母親だと思っていたが、最後にヒリーを追い払う母親はカッコイイ。
シーリアと旦那とミニーのシーンは、現実味は無いけど、とても素敵だった。
教会で黒人メイドたちが集まってエイビリーンを称えたのは、良かったのだろうか!?
結局、ヒリーが認めない限り、刑事罰に該当することもない…?
完全に沈黙するべきだと思った。
そしてエイビリーンの「私の子を宜しくお願いします」というセリフ。
これからどう生きたら良いか分からないけど、スッとした。
何でもヒリーの言いなりになっているエリザベスも、少しは頭をガツンとされただろうか。

1個気になるのが、スキーターが母親に髪の毛を整えてもらっているときに爪を噛んでいる事…
きっと「男っ気が無い」部分を分かりやすく体現しているシーンなのだろうけど、見るだけでも不快。
そして、その後の初デートでスチュアートも「おもしれえ女」となるのが理解できない。
そして謝りに来たスチュアートとなぜ交際を開始するのか分からない。
これはたぶん恋愛経験ゼロのスキーターにも理解できていないと思う…。
けど、23歳くらいの男女なんて、そんなものだろうか。
それとも時代の違いだろうか…。
ここの恋愛部分の描写に関しては丸ごと全く理解も共感もできなかった。
恋愛シーン、必要なのかしら。。

エイビリーンがエリザベスの子供に「お嬢ちゃんはいい子」と優しく接するのは、白人に対する復讐だろう。
現にスキーターも以前雇っていたメイドを”育ての親”と認識していた。
そうして少しずつ少しずつ白人との垣根を低くして行く…それがあっての現在なのだろうか。

編集長の女性…やり手の雰囲気を感じる、なぜだろうと思ったら、名探偵コナンの妃弁護士の声優だった!

ミニーのチキンが食べたくなった!
スチュアートと食べていた牡蛎がおいしそうだった!
シーリアが作った豪華な食事も素敵!
本筋とはズレるけど、食べ物がやたら美味しそうな作品だった。

✅魅力に感じたところ

  • 俳優陣の演技力
    ヴィオラ・デイヴィス(エイビリーン)、オクタヴィア・スペンサー(ミニー)、エマ・ストーン(スキーター)らの演技が高く評価され、感情の機微が丁寧に描かれている。
  • 人間関係の描写
    黒人メイドと白人女性の複雑な関係性が、友情や葛藤を通じてリアルに描かれている。
  • 社会的テーマの扱い
    人種差別だけでなく、白人女性たちの家庭内の閉塞感にも触れており、複数の視点がある。
  • 原作の力強さ
    ベストセラー小説を原作とし、物語の構造がしっかりしている。

❓気になったところ

  • 根本的な解決が描かれない
    差別の構造そのものが変わるわけではなく、後味がやや苦いと感じる人もいる。
  • 白人視点が強め
    スキーターを中心に物語が進むため、黒人メイドたちの視点がやや補助的に見えるという批判もある。

🎥映像について

この作品は、柔らかな光と温かい色彩で、痛みと希望を包み込む作品。

  • 1960年代の再現性
    衣装、セット、色彩設計が丁寧で、南部の空気感がよく表現されている。
  • 撮影技術
    スティーヴン・ゴールドブラットによる撮影は、人物の表情や空気感を柔らかく捉えており、感情の流れを映像で補完している。
  • 色彩と光の使い方
    明るい色調と自然光を多用し、重いテーマを視覚的に軽やかに見せる工夫がされている。

以上、「ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜」の感想でした。

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