作品情報
- 公開:2009年02月20日
- 上映時間:142分
- 制作:アメリカ
- 監督:クリント・イーストウッド
- 視聴方法:U-next
キャスト
- アンジェリーナ・ジョリー(クリスティン・コリンズ役)
- ジョン・マルコヴィッチ(グスタヴ・ブリーグレブ牧師役)
- ジェフリー・ドノヴァン(J.J.ジョーンズ警部補役)
- コルム・フィオール(ジェームズ・エドガー・デーヴィス警察署長役)
- ジェイソン・バトラー・ハーナー(ゴードン・ノースコット役/少年誘拐殺人事件の犯人)
- エイミー・ライアン(キャロル・デクスター役/精神病院の女性)
- マイケル・ケリー(レスター・ヤバラ刑事役)
- ピーター・ゲレッティ(バート警部役)
- デニス・オヘア(ジョナサン・スティール役/精神病院の医師)
あらすじ(ネタバレなし)
1928年ロサンゼルス。
息子が突然失踪したシングルマザーは、警察の対応に疑問を抱きながら真実を追い求める。
やがて彼女は、権力と闘うことになる。
実話をもとに描かれた衝撃のヒューマンドラマ。
以下、ネタバレあり
あらすじ(ネタバレあり)
🟩起:消えた息子
1928年、ロサンゼルス。
電話会社に勤めるシングルマザーのクリスティン・コリンズは、急な仕事で外出し、9歳の息子ウォルターを家に残して出勤する。
帰宅するとウォルターの姿がなく、警察に通報するが「24時間経過しないと捜査できない」と言われる。
翌日から捜索が始まるが、手がかりは得られない。
5か月後、警察は「イリノイ州でウォルターが見つかった」と発表し、駅での再会を報道陣が取り囲む。
しかし汽車から降りてきた少年は、クリスティンが一目で「息子ではない」と断言する別人だった。
警察は「容姿が変わっただけ」「混乱している」と主張し、少年も「僕がウォルターだ」と名乗る。
クリスティンは困惑しながらも、警察の圧力で少年を自宅に連れ帰ることになる。
🟨承:闘いの始まり
クリスティンは少年がウォルターではないと確信し、警察に再捜索を依頼するが拒否される。
少年の身長はウォルターより7cm低く、割礼もされていた。
牧師グスタヴ・ブリーグレブは、警察の腐敗を告発する活動をしており、クリスティンに協力を申し出る。
歯科医や学校教師も「別人」と証言するが、警察は認めず、クリスティンの精神状態を疑う。
市警のジョーンズ警部は、彼女を「母親の責任から逃げている」と非難し、精神病院に強制収容する。
病院では「警察の判断を認めれば退院できる」と言われるが、クリスティンは拒否する。
協力してくれた牧師を頼りに、彼女は息子の捜索と警察の不正を暴くため、証拠を集めて闘う決意を固める。
精神病院では、警察に逆らった女性たちが多数収容されていることが明らかになる。
🟥転:連続殺人の発覚
同時期、レスター・ヤバラ刑事は不法滞在の少年サンフォード・クラークを拘束。
尋問の中で、彼は従兄ゴードン・ノースコットと共に、20人以上の少年を誘拐・殺害したと証言する。
ウォルターもその犠牲者の可能性が浮上する。
警察はゴードンを逮捕し、農場から複数の遺体を発見。
クリスティンは精神病院から釈放され、事件の真相を知る。
市民の支持を得て、ロス市警の改革が始まる。
偽ウォルターを名乗っていた少年は、後に「映画スターに会いたかった」という動機で嘘をついていたと告白する。
🟦結:余白
ゴードンはバンクーバーに住む自身の姉の家を訪れる。
しかし、既にバンクーバーの警察にもゴードンが起こした事件に関して周知されており、すぐに逮捕される。
そして、「コード12」で理不尽に拘束されていた精神科の患者たちは、裁判所命令でみな解放された。
クリスティンは裁判で証言し、警察の不正と暴力を公にする。
ゴードンは裁判で死刑判決を受けるが、ウォルターの遺体は見つからず、彼の生存の可能性も残される。
クリスティンは息子の生存を信じ続け、事件後も捜索を続ける。
彼女の闘いは、ロサンゼルス市警の体質改善と市民の意識改革を促す契機となる。
2年後、ゴードンの死刑前日、ゴードンから「本当のことを話す」と呼び出される。
しかし、会いに行くも最後まで「殺したかどうか」は一切語られない。
しばらく後、別の行方不明だった少年が見つかった。
彼は「ウォルターと一緒に農場から逃げた」と証言するが、真偽は不明。
クリスティンはその証言に新たな希望を見出し、息子がどこかで生きている可能性を信じ続ける。
感想(ネタバレあり)
冒頭、息子がいなくなって2週間の時に牧師が警察の「ロス市警は私利私欲に走って腐敗している」とスピーチしていたが、どこも警察ってそうなのだろうか。
日本でもそのような話はよく聞く。
石原さとみの「ミッシング(2024)」も、小さな娘が行方不明になり、「見つかりました」と連絡が来る瞬間があった。
発狂するように喜んで、浮足立ったように走って迎えに行っていた。
親から見た子供ってそれだけ重要なんだ。
そりゃあ、ニートでもなんでも生きてさえいてくれれば良いと考える親もいて当然だ。
1928年なんかはもちろんDNA鑑定はなく、「割礼してある」「身長が低い」という証拠を出すが、「子供の面倒くらい見られるだろ、なんで責任逃れをするんだ。5か月間、子供という足手まといがなく楽しくやっていたから戻りたいんだろう?」という的外れの返答。
頭がおかしくなりそうだ。
しかし、次に歯医者に連れて行くなんて、なんて頭のいい母親なんだろう。
教師も「生活習慣」をもとに証明してくれる。
未来は明るく見えた。
しかし、一瞬で地獄に落ちてしまった。
まるで虫けらを指で叩き落とすように扱われて。
「警察がそんなひどいことをするの?」という疑問。
「警察だからこそ」そんなことが出来るし、メンツを保つために、するのだ。
「いつ頃から人が違って見えるようになりましたか?」「警察は仕返しのためにここに送り込んだと言いましたね?」「現実と空想の区別がついていないようですね」
精神科医は怖い。
都合の良い解釈、揚げ足取り、こうやって仕立て上げられてしまう。
少年サンフォード・クラークの告白はとても恐ろしかった。
子供ばかり狙ったなぶり殺し。
きっと親は後悔ばかり残るだろう。
「知らない人について行っちゃいけない」と言っても、防ぎきれないことはあるんだ。
そもそもなぜサンフォードは不法滞在がバレたのか?と思い調べたら、実際の事件では、彼の姉ジェシー・クラークが、弟がアメリカに不法に連れて行かれたことを疑い、カナダ当局に通報らしい。
ゴードンもアホよな。
姉夫婦の家を訪れるとは。
姉の息子(サンフォード)が不法滞在で連れていかれたということは察しているなら、そこから自身の事件もバレていると考えるものだと思うけど…。
短絡的で、手の込んだ事件を起こした人物とは思えない。
この作品でも、トリアー監督の「ダンサー・イン・ザ・ダーク(2000)」でも絞首刑を見ることが出来たけど、気になって調べたら、今でも一般人(被害者家族)が見学できるらしい。
驚き。
因みに日本ではできない。
全体的に面白いのだけれど、長い…。
イーストウッド作品は長い傾向にあるけれど、少し削れないのかしら。
削ってこれなのかしら。
素晴らしい作品ではあるんだけどね。
✅魅力に感じたところ
- 実話ベースの重厚なドラマ構造
1928年のロサンゼルスで実際に起きた事件をもとにしており、社会的リアリティと倫理的緊張感が強い。
母親の視点から描かれる「国家権力との闘い」が、個人と制度の対立を鮮明に描く。 - アンジェリーナ・ジョリーの演技力
主演女優として、母親の絶望・怒り・希望を繊細に演じ分ける。
特に「息子ではないと気づく瞬間」や「精神病院での沈黙の抵抗」が圧巻 - 脚本の構成力
J・マイケル・ストラジンスキーによる脚本は、サスペンスとヒューマンドラマを融合。
警察腐敗・女性差別・精神医療の問題など、複数の社会テーマを整理して配置している。
❓気になったところ
- 説明不足の部分がある
ゴードン・ノースコットの心理描写や、サンフォード・クラークの背景がやや省略されている。
実話に忠実な分、ドラマ的な深掘りが抑制されている場面もある。 - 終盤の余韻が重すぎる
息子の行方が不明のまま終わるため、“救いがない”と感じる。 - テンポが緩やかすぎると感じる層も
142分の長尺で、静かな演出が続くため“地味”と感じた。
法廷シーンや精神病院の描写が淡々と進むため、緊張感が途切れる瞬間もある
🎥映像について
この作品は、映像・演技・構成が静かに高密度で融合した社会派ドラマ。
- 1920年代ロサンゼルスの再現力
美術・衣装・街並みの再現が精緻で、時代の空気感を映像で伝える力が強い。
特に電話交換所や市警本部、精神病院の内装が制度の冷たさを象徴的に演出している。 - トム・スターンによる撮影
色調はくすんだセピア系で、過去の記憶と不条理を視覚的に表現。
長回しと静かなカメラワークが、主人公の孤独と葛藤を丁寧に映し出している - 編集の緩急と演出の抑制
感情を煽る音楽や過剰な演出を排し、観客の感情を“自発的に動かす”構造になっている。
裁判シーンではテンポを上げ、緊張感と論理性を両立している。
以上、「チェンジリング」の感想でした。


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