作品情報
- 公開:1993年04月29日
- 上映時間:157分
- 制作:アメリカ
- 監督:マーティン・ブレスト
- 視聴方法:U-next
キャスト
- アル・パチーノ(フランク・スレード役/盲目の退役軍人)
- クリス・オドネル(チャーリー・シムズ役/名門校の苦学生)
- ジェームズ・レブホーン(トラスク校長役/ベアード校の校長)
- ガブリエル・アンウォー(ドナ役/タンゴの相手となる女性)
- フィリップ・シーモア・ホフマン(ジョージ・ウィリス・Jr役/チャーリーの同級生)
- リチャード・ヴェンチャー(W・R・スレード役/フランクの兄)
- サリー・マーフィ(カレン・ロッシ役/スレード家の親族)
- ブラッドリー・ウィットフォード(ランディ・スレード役/フランクの甥)
あらすじ(ネタバレなし)
名門校に通う苦学生チャーリーは、感謝祭の休暇中に盲目の退役軍人フランクの世話をするアルバイトを始める。
気難しいフランクと数日間を共に過ごす中で、チャーリーは人生の選択や信念と向き合うことになる。
以下、ネタバレあり
あらすじ(ネタバレあり)
🟩起:盲目の退役軍人との出会い
名門高校に通う奨学生チャーリー・シムズは、感謝祭の休暇中に旅費を稼ぐため、学校掲示板で見つけたアルバイトに応募する。
仕事内容は、盲目の退役軍人フランク・スレード中佐の世話係。
チャーリーが訪れた家では、フランクが離れに一人で暮らしており、毒舌で酒好き、気難しい性格だった。
フランクの家族は旅行に出かける予定で、チャーリーはその間の付き添い役となる。
一方、学校では校長のジャガー車にイタズラがあり、チャーリーと同級生ジョージが目撃者として疑われる。
校長トラスクは、犯人の名前を言えばハーバード推薦、黙れば退学という選択をチャーリーに突きつける。
チャーリーは板挟みの状況に置かれたまま、フランクとの数日間を過ごすことになる。
🟨承:ニューヨークへの突発旅行
感謝祭の休暇が始まり、チャーリーはフランクの家を訪れる。
するとフランクは突然「ニューヨークへ行く」と言い出し、チャーリーを同行させる。
2人は高級ホテルに宿泊し、フランクはオーダーメイドのスーツを仕立て、レストランで女性とタンゴを踊り、豪華な食事と酒を楽しむ。
旅の最初の夜、チャーリーはフランクから自殺願望を聞かされる。
チャーリーは旅の途中もジョージに連絡を取ろうとするが、ジョージは富豪の父親に泣きつき、自分だけ助かろうとしていた。
フランクはチャーリーに学校での問題を聞き出し、校長の脅しについて知る
。
チャーリーは友人を売るか、自分が処分されるかの選択に悩み続ける。
フランクは奔放な振る舞いを続けながらも、チャーリーの葛藤に関心を示し始める。
2人は親族の集まりにも顔を出すが、フランクは家族と衝突し、孤立した態度を貫く。
🟥転:絶望と自殺未遂
ニューヨーク滞在中、チャーリーはフランクの様子に異変を感じる。
フランクはふさぎ込み、チャーリーは気分転換にフェラーリの試乗へ誘う。
フランクは盲目ながら運転を試み、猛スピードで車を走らせる。
一時的に高揚するが、再び沈んだ様子を見せる。
ホテルに戻った夜、チャーリーはフランクが軍服を着て拳銃を手にしているのを発見する。
フランクは失明の原因となった過去の事故を語り、自殺を図ろうとする。
チャーリーは必死に止め、もみ合いの末にフランクは思いとどまる。
翌日、2人はボストンへ戻り、チャーリーは学校での懲戒委員会に臨む準備をする。フランクはチャーリーに付き添い、校長の前で保護者代理として出席する。ジョージは父親と共に出席し、自己保身のために友人を売ろうとする。
🟦結:懲戒委員会とスピーチ
懲戒委員会が始まり、チャーリーは校長から再び犯人の名前を言うよう迫られるが、黙秘を貫く。
ジョージは犯人の名前を挙げて恩赦を得ようとする。
チャーリーが退学処分の危機に瀕した瞬間、フランクが立ち上がり、委員会に向けて演説を始める。
フランクはチャーリーの高潔さを称え、学校が正義を守るべきだと主張する。
生徒たちは拍手を送り、委員会はチャーリーに処分を科さない決定を下す。
チャーリーは救われ、フランクと共に学校を後にする。
その帰り道、女性教師がフランクに声をかけ、スピーチの感動を伝える。
フランクは彼女の香水を嗅ぎ当て、「これでいつでもあなたを探せる」と言う。
チャーリーとフランクは並んで歩き出し、数日間の旅を終える。
フランクが戻った先は、”孤独”ではなかった。
感想(ネタバレあり)
ニューヨークへ行く飛行機の中で、フランクが語る「女」について、「この世の中である4文字言葉だけが聞くに値する」と言った時、「LOVE」かな…と思ったら、「FU●K」だったので笑ってしまった。
そして次いでフェラーリ。
フェラーリってそんなに良い車なのかな?
少し打ち解けてきてからはジョークも聞かせてくれるフランク。
ジャックダニエルをジョンダニエルと間違えた時の「ジャックのファンはみんなジョンと呼ぶんだ」「今のは冗談だ」。
これは本当に間違えたわけではなく、チャーリーの緊張をほぐすためだ。
タクシーに乗っているときに「車が重い。お前が重い物を持ってるからだ」。
これは実際にデカいバッグを持っているわけではなく、重い悩みを抱えている。
言い回しが実に紳士で面白い。
「もうあと15分しかない。明日帰ればいいだろう。最終便の時間は嘘をついたんだ。」
強引だし天邪鬼だけど、面白い。
しかし、弟の家庭に感謝祭でお邪魔したシーンは最初から最後まで嫌な雰囲気だった。
グロリアではない、妻の名はゲイルだ。
チャッキーではない、友人の名はチャーリーだ。
このシーンは、株が上がってきたフランクが、最初の印象通り「面倒くさい老人だった」という再確認と、「それでも良いところがあるのに」というチャーリーの葛藤、友情がしっかりと芽生えた瞬間だった。
まあ、男のロマンと言えば聞こえはいいが、女からしたら嫌だ嫌だと思ってしまうような、フランクは男臭く偏見に満ちた男だった。
きっと相性がかなりしっかり別れるキャラクターだが、アルパチーノのピッタリ具合が素晴らしい。
目が見えない演技はもちろんのこと、その役の人生、考え、感情、すべてがアルパチーノそのもののように感じた。
声までも素晴らしく、演じているように見えない。
さすがアクターズスタジオと言わざるを得ない。
特に好きなフランクのセリフ。
(スーツの仕立て屋の女性が誤ってマチ針をフランクに刺してしまった際)「君に刺されて本望だ」。
「男が女を見るのを辞めるのは死ぬ時だ」
「彼がすぐ来るって?時はすぐ過ぎ去りますよ」
「私も白髪のゴーストだ」
「酒は、Mrジョン・ダニエルにしてくれよ」
(この作品は何度か見ているが、一度吹き替えで見たらフォレストガンプがよぎってしまい、そこからは字幕のみ。多分、この感情は映画好きあるあるだと思う。)
✅魅力に感じたところ
- アル・パチーノの圧倒的な演技
盲目の退役軍人フランク・スレードを演じ、アカデミー主演男優賞を受賞。
視線を動かさずに感情を伝える演技、毒舌と繊細さのバランスが秀逸。 - タンゴと演説の名シーン
若い女性とのタンゴシーンは、静と動の美しさが融合した象徴的場面。
懲戒委員会でのスピーチは、倫理と信念を貫く力強い言葉の連続で観客の心を打つ。 - キャラクターの対比構造
フランクの破天荒さとチャーリーの誠実さが、世代・価値観・人生観の対比として機能。
2人の関係性が徐々に変化する過程が丁寧に描かれている。
❓気になったところ
- 校長の描写が類型的
トラスク校長は“権威主義の象徴”として描かれるが、ややステレオタイプな悪役構造。
物語の倫理的対立軸としては機能するが、深みには欠けるという指摘も。 - 女性キャラクターの描写が限定的
ガブリエル・アンウォー演じるドナは印象的だが、物語上の役割は象徴的にとどまっている。
女性の香り=夢の象徴という構造が、現代的な視点では賛否を呼ぶ可能性もある。
🎥映像について
この作品は、演技・構成・映像が三位一体となって“人生の香り”を描くクラシカルな人間ドラマ。
- クラシカルな撮影スタイル
カメラは基本的に安定した構図で、演技と台詞に集中できる設計。
フェラーリ試乗やタンゴなど、動きのある場面ではダイナミズムが際立つ - 色彩と照明の演出
ホテルやレストランでは暖色系の照明でフランクの“人生の残照”を表現している。
学校や委員会の場面では寒色系で、権威と緊張感を強調している。 - 嗅覚を映像で表現する挑戦
香水や石鹸の香りをフランクが嗅ぎ分ける場面では、観客の想像力を刺激する演出。
香りという“見えない感覚”を、表情・台詞・空気感で可視化している。
以上、「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」の感想でした。


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