作品情報
- 公開:2017年09月22日
- 上映時間:97分
- 制作:アメリカ
- 監督:ダニエル・クワン
- 視聴方法:U-next
キャスト
- ダニエル・ラドクリフ(メニー役/漂着した死体)
- ポール・ダノ(ハンク・トンプソン役/無人島に取り残された男性。)
- メアリー・エリザベス・ウィンステッド(サラ・ジョンソン役/ハンクが憧れる女性)
あらすじ(ネタバレなし)
無人島で絶望する青年ハンクは、波打ち際に流れ着いた奇妙な死体メニーと出会う。
その死体には不思議な力があり、2人は文明へ戻る旅を始める。
以下、ネタバレあり
あらすじ(ネタバレあり)
🟩起:孤島の絶望と死体との邂逅
青年ハンクは無人島に漂着し、救助も望めず絶望の中で自殺を試みる。
首に縄をかけた瞬間、波打ち際に男の死体が流れ着く。
ハンクは死体に駆け寄るが、すでに腐敗が進んでいた。
再び自殺を試みようとした矢先、死体が尻からガスを放出し、海面を滑るように進み始める。
ハンクは死体に跨がり、ジェットスキーのように海を渡って島を脱出。
気を失った後、目覚めると本土らしき浜辺に漂着していた。
携帯は圏外で助けは呼べず、死体とともに森へと入っていく。
洞窟で一夜を過ごし、死体に語りかけることで孤独を紛らわせようとする。
翌朝、死体の口から真水が溢れ出し、ハンクは驚きと感謝を覚える。
死体は「メニー」と名乗り、言葉を話し始める。
🟨承:万能死体との旅と記憶の再構築
ハンクはメニーの奇妙な能力に気づく。
ガスで物を飛ばし、電流を発し、火を起こすなど、まるで十徳ナイフのような機能を持つ。
ハンクはメニーに人間の生活や感情を教えながら、森の中で創作物を作り、疑似的な社会を築いていく。
ある日、メニーがハンクのスマホの待ち受け画像の女性に恋をする。
彼女はサラという既婚女性で、ハンクが密かに憧れていた存在だった。
メニーは彼女に会いたいと願い、勃起する方向が“故郷への道”だと信じるようになる。
ハンクはその方向を頼りに旅を続ける。
ハンクはメニーに女装させられたり、出会いのシーンを再現したりと、記憶の再構築に協力する。
2人の間には友情と依存が芽生え、旅は奇妙ながらも心温まるものとなっていく。
🟥転:現実との接触と関係の崩壊
旅の途中、ハンクは電波を拾い、父親からの誕生日メールを受信する。
同時にサラのSNSを確認し、彼女が既婚者であることを再認識。
メニーに真実を告げられず、関係に亀裂が生じる。
さらに森で巨大な熊に遭遇し、ハンクはメニーに助けを求めるが、メニーは能力を発揮しなくなる。
ハンクは熊に襲われ負傷するが、メニーは再び力を使い、ハンクを守る。
その後、ハンクは気を失い、目覚めるとメニーに背負われて森を進んでいた。
ついに森を抜け、サラの自宅の庭に到達。
サラの娘が2人を発見し、サラ自身も現れる。
ハンクの異様な姿に驚いたサラは救急車を呼ぶが、メニーはただの死体に戻ってしまう。
警察がメニーを回収しようとする中、ハンクは彼を連れて逃げ出す。
🟦結:別れと死体の旅立ち
ハンクはメニーを連れて再び浜辺へ向かう。
途中、サラや警官たちは森の中に残されたハンクの創作物を目にし、彼の孤独と想像力の深さを知る。
浜辺に着いたハンクは、メニーに最後の別れを告げる。
するとメニーは再びガスを放出し、海へと滑っていく。
サラや警官たちがその様子を目撃し、驚きと困惑を覚える。
ハンクは笑顔でその光景を見届ける。
感想(ネタバレあり)
映画のポスターって、クライマックスのシーンが定石だと思っていたけど、まさかのほぼオープニング!
どういう経緯でハンクが故郷から逃げ出し船で出て漂流したのか、独りぼっちでどんな日々を過ごし自殺未遂に至ったのか、メニーがどんな経緯で死んでしまったのか、それはほとんど明確にならない。
鑑賞者は突然映画に放り込まれ、屁男死体が現れ、まるで屁男のジェットスキーに乗せられたように引っ張られて物語は進んでいく。
エミーが話すようになってからはファンタジー。
グラビア雑誌の女性の話でメニーが勃起するシーンは面白い。
男って、女性についてや性欲を知らなくてもそうなるのだろうか(笑)
そしてその勃った方向に故郷があるとこじつけるハンクもぶっ飛んでる(笑)
「先っちょだけ」って、日本だけじゃなくて海外でも言うのかな?
バスのシーンは特に素晴らしい。
写真をクルクルと流して、バスが動いているように演出する発想もすごいし、映像も言葉の表現も素敵。
「もうやめてくれ、美しすぎる。馬鹿なことを言ったら死にたくなる。」
それ、きっとみんな一度は思ったことがある。恋した瞬間。
このシーンを見られただけでも見た価値のある映画だった。
しかし実は、2016年のサンダンス映画祭でプレミア上映された際に、観客の途中退席が相次ぐほど賛否両論だったらしい。
それでもこの作品は、「米国ドラマ映画部門 最優秀監督賞」を受賞し、A24が配給権を獲得した。
また、撮影現場ではその音楽を流しながら演技することで、主演二人は感情のトーンを共有していたらしい。
立場が逆転したシーンにはびっくり。
気づいたら死体に背負われているハンク。
突然の故郷、突然の現実。
あれだけ「色々な感情を知ってほしい」と願ったメニーに対し、ハンクが「黙れ」と拳を口にねじ込む様は悲しい。
仲良くしていた友人が途端に恥ずかしくなって、バツンっと縁を切ってしまうこと、一度くらいは経験がある人が多いかも…。
メニーは橋から落ちて死に、海に流れ着いたようだ。
父親はショックから遺体の確認もせず、ハンクはエミーが生前置かれていた環境や父親との関係性を少し察したようだった。
死体を連れて逃げるところを見ると、本土の最初の海辺から森、サラの家までが近すぎるところとか、そんなもんなんかい!とも思ってしまう。
もしメニーが本当に最初から動かぬ遺体で、話したり闘ったりしたのがハンクの妄想なのだとしたら、確かに「遺体を連れて冒険」なんて大した距離できないよね、とも思う。
もし二人が生前に出会っていたら…いや、たぶん何も変わらなかっただろう。
エミーのほとんどは結局、謎のままだ。
友情を知り、恋を知り、幸せを知り、人生を知り、食べ物の味を知り、歌を知り、恐怖を知り、希死念慮を知り、これからどうやって旅をするのだろう。
謎のまま、それが良い。
エミーの最後の言葉は、「僕がサラを愛していたことは秘密にして」だった。
彼は、愛の尊さも知った。
でもエミーに言いたい。
「…ジュラシックパークを知らないなんて、終わってるぞ」
ぜひ”映画”も知ってほしい。
✅魅力に感じたところ
- 奇抜なアイデアを本気で映像化
死体が十徳ナイフのように機能するという突飛な設定を、大真面目に演出・演技・音楽で支えている。
放屁ジェットスキー、口から水、勃起コンパスなど、バカバカしさと詩性が共存している。 - 主演2人の演技力
ポール・ダノは孤独と妄想に沈む青年を繊細に演じ、感情の揺れを丁寧に表現。
ダニエル・ラドクリフは死体役ながら、表情・声・身体で“生きた存在”を演じ切っている。 - 妄想と現実の境界を曖昧にする構造
- ハンクの妄想空間と現実が交錯し、観客に「これは現実か?」という問いを投げかける。
最後の浜辺のシーンで、周囲の人々がメニーの動きを目撃することで、幻想が現実に侵食する演出が秀逸。
❓気になったところ
- 設定に拒否反応を示す人も多い
死体との友情、放屁、勃起などの描写が下品・不快と感じる可能性もある。
サンダンス映画祭では特に序盤の“屁ジェット”で離脱する人が続出したという。 - 物語の目的が曖昧に感じられる
ハンクの旅の背景や、メニーの存在意義が明確に語られないため、構造的に混乱する。
最後にメニーが動く理由も説明されず、“解釈に委ねすぎ”という批判もある - テンポにムラがある
中盤は妄想空間の再現が続き、物語の進行が停滞しているように感じられる。
孤独や友情が故のDIY演出や女装シーンが、冗長に感じる場合もある。
🎥映像について
この作品は、なによりロケーションの力を最大限に活かした美しさが魅力的。


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