作品情報
- 公開:1998年01月15日
- 上映時間:116分
- 制作:アメリカ
- 監督:リー・デヴィッド・ズロトフ
- 視聴方法:U-next
キャスト
- アリソン・エリオット(パーシー・タルボット役/主人公)
- エレン・バースティン(ハンナ・ファーガソン役/スピットファイア・グリルの経営者)
- マーシャ・ゲイ・ハーデン(シェルビー役/ハンナを支える女性)
- ウィル・パットン(ネイハム・ゴダード役/シェルビーの夫)
- キーラン・マローニー(保安官ジョー・サター役)
- ゲイラード・サーテイン(保安官ウォルシュ役)
- ジョン・M・ジャクソン(イーライ役/謎の訪問者)
- ルイーズ・デ・コーミア(エフィー役/郵便局長)
あらすじ(ネタバレなし)
刑期を終えた女性パーシーは、静かな田舎町ギリアドに移り住み、食堂で働き始める。
偏見や孤独に向き合いながら、少しずつ人々との絆を築いていく。
以下、ネタバレあり
あらすじ(ネタバレあり)
🟩起:赦しを求めて、バスは森へ向かう
傷害致死罪で5年服役した若い女性パーシー・タルボットは、人生をやり直すためにメイン州ギリアドという田舎町にやってくる。
保安官の紹介で、スピットファイア・グリルという食堂を営む老女ハナのもとで住み込みとして働くことになる。
町の人々は排他的で、パーシーの前科を知ると噂が広まり、特にハナの甥ネイハムは強い疑念を向ける。
一方、青年ジョーはパーシーに好意を抱き、ドライブに誘うが、過去を詮索されてパーシーは怒って帰宅。
帰宅するとハナが怪我をして倒れており、ジョーと協力して病院へ運ぶ。
ハナはギプス姿で戻り、やむを得ずパーシーに店の世話を任せることになる。
料理が苦手なパーシーは苦戦するが、次第に町の空気に馴染み始める。
🟨承:友情と希望が芽吹くグリル
パーシーの料理の腕に限界を感じたハナは、甥の妻シェルビーを店に手伝いに寄越す。
シェルビーは料理が得意で、2人は息の合ったコンビとして働き始め、友情を育む。
ある夜、ハナに頼まれたパーシーは缶詰を麻袋に入れて裏庭の切り株に置く。
そこへ森から謎の男が現れ、袋を持ち去る姿を目撃する。
パーシーは彼に声をかけるが返答はない。
後日、ハナが店を売りたがっていることを知ったパーシーは、作文コンテストで店を譲渡するアイデアを提案。
参加者が100ドルと作文を送る形式で、優勝者に店を譲るというもの。
ハナはこれに同意し、パーシーとシェルビーが準備を進める。
パーシーの機転で新聞に取り上げられ、応募が殺到。
パーシーとシェルビーは教会で語り合い、互いの過去や悩みを共有する。
町の人々も少しずつパーシーに心を開き始める。
🟥転:疑念と真実が交差する森の夜
応募金が増えるにつれ、ネイハムはパーシーが金を盗んでいると疑い始める。
ハナは金を麻袋に入れて森の男に渡していたが、ネイハムはそれを知らず、警察に通報。
パーシーは一時拘束される。
ハナは警察に事情を説明し、パーシーは釈放される。
森の男の正体は、ハナの息子イーライだった。
彼はベトナム戦争で心に深い傷を負い、町に戻れず森でひっそりと暮らしていた。
ハナは息子に食料を届け続けていたのだ。
パーシーはイーライに会いに行き、彼の心を開こうとする。
🟦結:静かに降りた天使の足跡
その夜、ネイハムは森へ向かい、イーライを追い詰める。
パーシーはイーライを守るために間に入り、崖から落ちそうになったイーライを助けようとするが、自らが転落してしまい、パーシーは命を落とす。
パーシーの死は町に衝撃を与える。
彼女の行動によって、イーライは人間らしさを取り戻し、町の人々も彼女の優しさと勇気に気づく。
ハナは息子と再会し、長年の孤独と痛みが癒される。
シェルビーは自信を取り戻し、ネイハムとの関係にも変化が生まれる。
ジョーはパーシーの思いを胸に、町の自然を守る活動を続ける。
パーシーの存在は、町に静かな変化をもたらしたのだった。
感想(ネタバレあり)
天使なら、幸せで幸せで幸せで、あー幸せだった!と思える終わりを迎えてほしかった。
「悲しい」「がっかり」というより、「ショッキング」「衝撃」という印象。
シェルビーと一緒に初めて料理をするシーンは可愛らしくて、ワクワクして、良い場面だった。
シェルビーの「え…こいつ…ヤバ!これ提供しようとしてるわけ?!」という様子がとても好きだし、その直後に綺麗に焼くシェルビーを見て一目置くパーシーの顔も好き。
なんかネットリしてる料理、何だったんだろう(笑)
でも、私もそこそこ料理はやるとはいえ、オーダーを取ってお客さんに出すなんてことは出来ないかもしれない…。
「君が初めて街に来た夜、何かいいことが起こる気がした」
ジョーのこのセリフは、まさに「天使の到来」という感じだ。
しかしどうしても女性というのは「グイグイ来てくれる男性」よりも「謎めいてよく正体が分からない謎の人物」に惹かれるんだろうか。
それとも、女性としての生殖能力を失い、罪を犯したパーシーだからこそ、同じく心に傷を負ったイーライに惹かれるのだろうか。
よく、「片親育ちは”両親揃った人の普通”を知らないし、逆は”片親育ちの常識”を知らず、渡り合えない」だとか、「自己肯定感が低い人は”良い人”と交際するのは気が引ける結局ちょっと残念な人と交際してしまう」だとか聞くけど、そんな感覚だろう。
事実、シェルビーの夫はずっと「パーシーはこの町に不必要な女だ」「ハナの死体が見つかってからみんな目を覚ますことになる」等、頭からパーシーを全否定している。
そんな女性が、傷ひとつないジョーと綺麗に人生を過ごせるわけはないのだ。
服役していたパーシーの犯した罪は、傷害致死。
10代のころから性的暴行を受けていた義父を殴った結果、死に至らしめてしまったという事だが、母親に暴力をふるっているところへ、パーシーが反撃した結果だった。
しかし、正当防衛が認められず、傷害致死罪で有罪判決を受け、5年間服役。
この話は物語の終盤でシェルビーにだけ打ち明けられる。
邦題タイトルの「天使」とは何なんだろう。
天使とは、赦しを与え、救済するというイメージだった。
パーシーは、その罪を赦されて、この町にやってきた。
自身に偏見を持ち疑った、町の人々を赦し、救済して、町やイーライに再生をもたらし、役目を終えたのだろうか。
✅魅力に感じたところ
- 静かな感情の積み重ね
派手な演出はなく、登場人物の表情や沈黙、日常のやり取りを通して感情が丁寧に描かれている。
特にパーシーとハナ、シェルビーの関係性の変化が自然で、観る者に余韻を残す。 - 贖罪と再生のテーマが明確
前科者であるパーシーが、町の偏見と向き合いながら信頼を築いていく過程が、静かに力強い。
ハナの息子イーライとの関係を通じて、過去の傷と向き合う構造が深い - 女性たちの連帯が描かれる
パーシー、ハナ、シェルビーという異なる世代(人生のステージ)の女性が、互いの痛みを理解し合い、支え合っているのが素敵。 - 邦題の詩的な秀逸さ
原題は『The Spitfire Grill』だが、邦題『この森で、天使はバスを降りた』は内容の象徴性を巧みに捉えていて、「改変された邦題」の中でも最も美しい。
パーシーの存在が“天使”として町に癒しをもたらすという比喩が、物語と調和している。
❓気になったところ
- 展開が緩やかすぎる
中盤は特にテンポが遅く、事件性や緊張感に乏しい場面が続くため、観る人によっては「退屈」と感じる可能性がある。 - ネイハムの描写が類型的
ハナの甥ネイハムは偏見に満ちた人物として描かれるが、動機や背景が浅く、ややステレオタイプ。
彼の改心も唐突で、ドラマとしての説得力に欠ける部分がある。 - コンテストの扱いが曖昧
作文コンテストという仕掛けは物語の中盤で盛り上がるが、終盤ではフェードアウトし、結末が描かれないため、物語の構造としては未完の印象を覚える。 - パーシーの死の演出が唐突
イーライを守るために命を落とす展開は感動的だが、演出としてはやや急で、余韻の積み方に課題がある。
🎥映像について
この作品は、静かな演出と深いテーマ性が融合した“沈黙のドラマ”。
- 自然光と森の描写が美しい
ギリアドの森や丘、朝の光など、自然の風景が静かに心を打つ。
特にパーシーが丘で歌う場面は、宗教的象徴と映像美が融合していて綺麗。 - 色彩設計が柔らかい
全体的に淡い色調で統一されており、登場人物の感情と調和している。
暖色系の室内と寒色系の森の対比が、空間の意味を強調している。 - 静けさが物語っている
映像の静けさと音楽の温かさが、物語の余韻を深める。
以上、「この森で、天使はバスを降りた」の感想でした。


コメント