作品情報
- 公開:2025年02月28日
- 上映時間:138分
- 制作:アメリカ
- 監督:ショーン・ベイカー
- 視聴方法:PrimeVideo
キャスト
- マイキー・マディソン(アノーラ役:アニー/ストリップダンサー)
- マーク・エイデルシュテイン(イヴァン役:ヴァーニャ/ロシアの御曹司)
- ユーリー・ボリソフ(イゴール役/イヴァンの世話係)
- カレン・カラグリアン(トロス役/イヴァンの父親に雇われた世話係)
- ヴァチェ・トヴマシアン(ガルニク役/トロスの兄弟)
- リンジー・ノーミントン(ダイアモンド役/ストリップで勤務)
- アイビー・ウォーク(クリスタル役/キャンディショップの店員でイヴァンの友人)
- ダリア・エカマソワ(ガリーナ・ザハロフ役/イヴァンの母)
あらすじ(ネタバレなし)
ニューヨークでストリップダンサーとして働くアノーラは、ロシアの富豪の御曹司と偶然出会い、契約関係を結ぶことに。
贅沢な日々を共に過ごす中、二人の関係は思わぬ方向へ進展するが、背後には複雑な現実が待ち受けていた。
以下、ネタバレあり
あらすじ(ネタバレあり)
🟩起:契約から始まるシンデレラ
ニューヨークのストリップクラブで働くアノーラ(本名アニー)は、ロシア語が少し話せることから、店に訪れたロシアの富豪の御曹司イヴァンの接客を任される。
イヴァンはアノーラを気に入り、1万5000ドルの報酬で「1週間限定の彼女」として契約を交わす。
アノーラは彼の仲間たちと共にパーティ三昧の贅沢な日々を過ごし、ラスベガス旅行へと同行する。
そこでイヴァンは「アメリカ人と結婚すれば帰国しなくて済む」と言い出し、勢いでアノーラと結婚。
アノーラは突然の”シンデレラ”展開に戸惑いながらも、夢のような時間に身を委ねる。
しかし、イヴァンの両親がこの結婚を知ったことで、物語は一気に現実へと引き戻されていく。
🟨承:逃げる王子、追う娼婦
ニューヨークに戻った2人だったが、イヴァンは両親に結婚を報告していなかった。
やがてロシアからイヴァンの両親の部下たち(神父トロス、用心棒イゴール、ガルニク)が現れ、アノーラとの結婚を「なかったこと」にしようと動き出す。
イヴァンは彼らの訪問を察知し、アノーラを残して逃亡。
アノーラは彼らに詰め寄られながらも抵抗し、イヴァンを探すために3人と共にニューヨーク中を奔走する。
アノーラは「イヴァンの口から正式な結婚の意思を聞き出せば、両親も認めるはず」と信じていた。
ようやく見つけたイヴァンは、かつてアノーラが働いていたクラブで泥酔し、別の女性と遊んでいた。
アノーラの夢は、少しずつ崩れ始める。
🟥転:親の権力、愛の無力
イヴァンの両親がアメリカに到着。
アノーラは結婚を認めてもらおうとするが、母親は彼女を「娼婦」と蔑み、財産目当てだと決めつける。
アノーラが「離婚するなら裁判を起こして財産を半分もらう」と言うと、母親は「裁判を長引かせて一文無しにしてやる」と脅す。
婚姻無効手続きを進めようとするも、ラスベガスでの結婚だったためニューヨークでは処理できず、一行はラスベガスへ向かう。
飛行機に乗る直前、アノーラはイヴァンに詰め寄るが、彼はすでに離婚の意思を固めていた。
ラスベガスで手続きが完了し、イヴァンは両親と共にロシアへ帰国。
アノーラは一夜を彼の家で過ごし、翌朝、イゴールと共に自宅へ戻ることになる。
🟦結:名前に宿る光
イゴールはアノーラを車で送り届ける途中、彼女に静かに語りかける。
アノーラはテレビを見ながら、イゴールに対して感情をぶつけるように身体を寄せるが、キスを拒み、彼の胸で泣き崩れる。
イゴールは「アノーラという名前には”明るさ”という意味がある」と語り、彼女が失った結婚指輪を返す。
アノーラは、イヴァンとの関係が”契約”で始まり、”無効”で終わったことに深い虚しさを感じながらも、イゴールの言葉に救われる。
感想(ネタバレあり)
アニーが働いているクラブ、何か見たことあるなと思ったら、GTAで見たやつだ!!!!
あのクラブの雰囲気、こういう仕事って本当にあんな感じなのかと驚いた。
日本の映画ではあのスタイルの店って見かけないし、文化の違いをまざまざと感じる。
リアルな描写にちょっと感動すら覚えた。
2回目は吹替で観たんだけど、アニーの声に違和感がありすぎて、なんだかジブリ感が漂ってきた。
叫び声が妙に陳腐で、感情の波に乗れない…。
調べてみたら女優さんが声を当ててるらしくて、「風立ちぬか…」って思った。
演技力はあるんだろうけど、声演技はまた別だし、質感が作品のトーンとズレてる気がした。
物語がシンデレラストーリーっぽく進んだ後、イヴァンの親に結婚がバレて、アニーが「娼婦」と罵られるシーンはちょっと笑った。
イヴァンは「彼女はエロティックダンサーだ!」って反論するけど、その界隈に関係のない人から見たらその違いって伝わらないよね。
職業に対する偏見がむき出しで、社会の冷たさを感じたけど、それが現実。
イヴァンを探すくだりはちょっと中弛み。
最初はアニーが運命の出会いをしたと思って応援してたけど、途中から「底辺から玉の輿に乗れてラッキー!クソ女たち、バイバーイ!」みたいな雰囲気が見えてきて、なんだか可哀想に思えなくなってしまった。
彼女の純粋さが、少しずつ打算に見えてくるのが切ない。
裁判のシーンでは、イヴァンが途中で挟んだ「僕は酩酊してる…」ってセリフに笑ってしまった。
アメリカ映画特有の、人が話してるのに他人が話し続ける感じの言い合いが苦手で、この場面はちょっとイライラ。
テンポが悪くて、感情の流れが途切れる。
空港に着いてからのイヴァンの態度の変わりようは本当に怖かった。
まるで「お遊びは終わりだよ」って言わんばかりの不貞寝。
吐き気がするほど冷酷で、相手の人生をオモチャとしか思ってないような男は本当に嫌い。
アニーの表情が痛々しくて、見ていて辛かった。
でも、タイトルが「アノーラ」になっているのはすごく良かったと思う。
これは「結婚が取り消されたシンデレラの話」でも「ヤクザみたいな義両親に無理やり結婚破棄された女の話」でもなく、「アノーラという女性の物語」なんだっていう強さを感じた。
彼女がイゴールから「アニーよりアノーラの方が良い」と言われるシーンには、静かな希望があった。
ちなみに、アニーの顔が入山法子にちょっと似てるなって思った。
表情の繊細さとか、目の奥にある感情の揺れ方が似ていて、妙に親近感が湧いた。
✅魅力に感じたところ
- 現実への引き戻し方が巧み
前半はシンデレラ的な夢物語として進みますが、後半で一気に現実に引き戻される構造が秀逸。
アニーが涙する車内のシーンは、夢から覚める瞬間として非常に象徴的。 - 主演マイキー・マディソンの演技力がすばらしい
体当たりの演技で、アノーラの複雑な感情や葛藤をリアルに表現。
特に感情が爆発する場面では、観客の共感を強く引き出します。
インティマシー・コーディネーターも無しで挑んだんだとか。 - イゴールの存在が救済として機能
彼は恋愛対象ではなく、アノーラの”現実の受け皿”として描かれる。
ドラマチックな展開にせず、静かな優しさで支える姿が印象的。 - Z世代の価値観との接続
階級格差、自己決定、SNS的な自己演出など、現代の若者が直面するテーマを巧みに織り込んでいる。
❓気になったところ
- 吹替版の声の違和感
女優起用による演技の質感が、映像と噛み合わない場面がある。 - 中盤のテンポの緩み
イヴァンを探すくだりはやや冗長で、物語の緊張感が一時的に薄れ、集中が途切れる。 - イヴァンのキャラクター造形が不快すぎる
空港での態度の豹変や、アノーラを“お遊び”として扱う描写は、意図的とはいえ観る側に強い嫌悪感を与える。 - LGBT+表現への懸念
差別的な言葉の使用が現代の価値観にそぐわず、気になった
🎥映像について
この作品は、夢と現実の境界を描く作品として、構造的にも映像的にも非常に緻密でした。
- ショーン・ベイカー監督らしい“ネオリアリズム”
豪華な邸宅から怪しげなナイトクラブまで、ロケーションの振れ幅が大きく、現実と幻想の境界を視覚的に描いている。 - カオティックな演出スタイル
シーンの切り替えが早く、視覚的刺激が強い。
バズ・ラーマン的な派手さを感じるという声もあり、Z世代の視覚感覚にマッチしている。 - 色彩と照明のコントラスト
前半の華やかさと後半の沈んだトーンの切り替えが明確で、物語の転調を映像でもしっかり支えている。
以上、「アノーラ」の感想でした。


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