作品情報
- 公開:2024年02月09日
- 上映時間:118分
- 制作:韓国
- 監督:アン・テジン
- 視聴方法:U-next
キャスト
- リュ・ジュンヨル(ギョンス/盲目の鍼医役)
- ユ・ヘジン(仁祖/王役)
- キム・ソンチョル(ソヒョン世子役)
- チェ・ムソン(イ・ヒョンイク御医役)
- パク・ミョンフン(マンシク宮医/ギョンスの案内係役)
- アン・ウンジン(チョ・ソヨン/仁祖の側室役)
- チョ・ユンソ(カン嬪/世子嬪役)
- チョ・ソンハ(チェ領相役)
あらすじ(ネタバレなし)
17世紀の朝鮮王朝。
盲目の鍼医ギョンスは、弟の治療費を稼ぐため王宮で働き始める。
目が見えないはずの彼が、ある夜「見てしまった」出来事をきっかけに、宮廷の闇に巻き込まれていく。
以下、ネタバレあり
あらすじ(ネタバレあり)
🟩起:盲目の鍼医、王宮へ
鍼医ギョンスは盲目ながらも卓越した技術を持ち、町では評判の人物。
病弱な弟の治療費を稼ぐため、王宮で働くことになる。
王宮では身分の低い者は「見ない・聞かない・関わらない」が暗黙のルール。
ギョンスはその掟に従い静かに働くが、実は彼は完全な盲目ではなく、暗闇ではぼんやりと視界が開ける「夜盲」の特性を持っていた。
そんなある夜、王の息子である世子ソヒョンが清国から8年の時を経て帰還。
清国から帰還した世子は、異国の文明の発展に深く感銘を受けていた。
朝鮮も清国のように開かれた国を目指すべきだという思想を持つようになり、宮廷内でその考えを語るようになる。
これに賛同したのが、改革派の重臣・チェ領相だった。
彼は世子の思想に共鳴し、西洋や外国との交流を進め、国の体制を変えるべきだと王に提案する。
しかし、王は保守的な立場を崩さず、清国との関係や思想的影響を危険視していた。
そんな中、ギョンスは世子の治療を任され、信頼を得る。
しかし、ある夜の世子の治療中、部屋が暗くなった瞬間にギョンスは“見てはいけないもの”を目撃してしまう。
🟨承:見てしまった真実と恐怖
暗闇の中でギョンスが見たのは、御医ヒョンイクが世子に毒針を打つ瞬間だった。
世子はその後、七つの穴から血を流して死亡。
公式には感染症とされたが、ギョンスは真実を知ってしまった。
しかし、盲目とされている彼が「見た」とは誰にも言えない。
御医ヒョンイクはギョンスの視力を疑い、彼の目に針を突きつけて反応を試すなど、恐怖の圧力をかけてくる。
ギョンスは弟の命を守るためにも沈黙を選ぶが、心は揺れる。
王宮内では権力争いが激化し、世子の死を巡る陰謀が渦巻く。
ギョンスは「見ないふり」を続けるか、「真実を告げるか」の選択を迫られる。
🟥転:告発と命の危機
ギョンスは、暗闇の中で世子が毒針によって殺害される瞬間を“見てしまった”ことに苦悩しながらも、真実を告げる決意を固める。
しかし、盲目とされている彼が「見た」と証言するには大きなリスクが伴う。
まず彼は、世子の妻である世子嬪に密かに接触し、「世子は毒殺された」ことを告げる。
世子嬪はギョンスの言葉に耳を傾け、彼が差し出した毒針と告発文を手に、自ら王の前へ出向く。
彼女は「世子は感染症ではなく御医ヒョンイクに殺された」と告発する。
しかし、王は御医ヒョンイクが毒針を落としたことに激怒した。
世子の暗殺を計画したのは、他ならぬ王自身だったのだ。
世子嬪はギョンスの証言をもとに告発文を王に提出するが、王から「目撃者は誰か」と問われた際、ギョンスは自身を守るために御医ヒョンイクは無実だと逆に弁明してしまい、その結果、世子嬪は幽閉される。
世子と世子嬪の息子である若殿様は、ギョンスが目撃者であることを知り、母を助けるために証言するよう説得するが、ギョンスは応じない。
しかし、王が御医ヒョンイクに渡した世子暗殺の手紙を発見し、若殿様はそれが王の左手による筆跡だと証言する。
ギョンスは世子派のチェ領相と協力し、王の右半身を麻痺させる鍼を打ち、左手で文書を書かせることに成功する。
ところがその瞬間、御医ヒョンイクが現れ、ギョンスこそが犯人だと告発。
ギョンスはかろうじて左手の文書を入手するが、王宮から追われる身となる。
チェ領相の采配で逃亡の手筈は整っていたが、若殿様に毒針が打たれようとしていると知ったギョンスは引き返し、彼を救出。
なんとかチェ領相のもとへたどり着くが、領相は王と結託してしまった。
世子嬪は殺害され、若殿様は島流し、ギョンスは斬首刑に処される。
🟦結:夜の梟、最後の鍼
4年後、ギョンスは若殿様と同じ地で医師として働いていた。
斬首刑の夜、共に王の悪事を暴こうと奔走した世子派の人間が逃がしてくれたのだ。
衰弱し気が触れた王のもとに、名医として呼ばれたギョンスが現れる。
かつて世子に打たれた毒針と同じ手法で、王に鍼を打ち、王は七孔から血を流し、世子と同じ死を迎える。
ギョンスは復讐ではなく、正義の象徴としてその鍼を打ったのだ。
死因を聞かれたギョンスは答える。「感染症です」。
感想(ネタバレあり)
序盤から置いてけぼり…!
朝鮮と清国の歴史を知らないと、序盤から「え、なぜそうなったの?」状態だったので、軽く調べてみました。
・領相は総理大臣的ポジション。王とは別だけどかなり高い地位。
・「世子」は名前ではなく地位の名称。皇太子みたいなもの。
・舞台は1630年代頃。清国 vs 朝鮮の争いが発端。
・戦争の流れはざっくりこんな感じ。
清国「朝鮮よ、お前小さい国なんだから属国になれや」
朝鮮「嫌どす」
清国「処す!」
朝鮮「ヤラレター!」
清国「詫びとして息子(世子)を人質に差し出せや!」
…→ 8年の人質生活を終えて世子が帰国。ここから梟の物語が始まる。
韓国語って楽しい!
「様」や「準備」など、日本語と同じ発音の単語が多くて韓国語が楽しい! 「目撃者」も「モッギャッチャ」みたいな響きでちょっと面白い。
盲人とされていたギョンス、実は暗いところでは見えていた。
若殿様が夜に洗濯してた場面、音で察して想像したのかと思ったら、実は見えてたんだね。
王の「毒鍼をなくしたのか…愚か者め」ってセリフ、ぞわっとした…。
まさか王様が自分の息子を…!?
それまで世子とギョンスの関係等に焦点が合っていて、王の心情描写は出てこなかったから、こんな形で最初に出てきて驚いた。
そしてギョンスの「御医様ではありません!私が一緒にいましたので!」という裏切り。行動が全部裏目に出る歯痒さ。
でも最初に話した相手が世子の妻だったのは、結果的に良かったのかも。
でも思い返してみると、世子が帰ってくる日に、王はなかなか姿を見せなかった。
息子なのに、戻ってくることにいい気はしてなかったのかも。
盲人鍼灸師が採用されたのも、暗殺に都合が良かったから採用した…と言われていたので、出会うべくして出会ったんだね。
それにしても鍼って、あんなに一撃で右半身使えなくなるもの!?
神経めがけて打てば効果あるのかもしれないけど、痛覚とか…大丈夫じゃないか。
冒頭の少年を背負って走るシーン、弟かと思ったら若殿様だった!
そして朝日…見えない……!
通常は希望の象徴だけど、この映画では絶望の象徴。
斬首シーンで空を見上げる構図、広角の寄りで撮ってる画が印象的。
逃げられたのは良かったけど、世子の妻はとばっちりだったなぁ。
まあ、王の計画のどこかでいずれ殺されていた気もするけど…。
4年後に戻ってきて「感染症(笑)」で死んだと診断されたけど、ギョンスは実質別人として生きてる感じ。
鍼の名医なんてそうそういないし、誰か気づきそうだけど…目を瞑ったのかな(盲人だけに)。
重要人物が少なくて、西洋映画より顔の見分けがつきやすいキャスト構成。
演技も日本人に近い感じで、かなり見やすかったです。
✅魅力に感じたところ
- 設定のユニークさ
主人公が「明るい場所では見えず、暗闇では見える」という特殊な視覚障害を持つ鍼医という設定が斬新で、物語のサスペンス性を高めている。 - 脚本の完成度
見てはいけないものを「見てしまった」ことから始まる展開が、緻密に構成されていて、伏線の回収も見事。
宮廷内の権力闘争と個人の葛藤が巧みに絡み合っている。 - 俳優陣の演技力
リュ・ジュンヨルの繊細な演技が主人公の苦悩をリアルに伝える。
ユ・ヘジン演じる王の冷酷さも圧巻。 - 史実とのリンク
仁祖実録に記された「怪奇の死」をベースにした物語で、歴史的背景に興味が湧く構成。
❓気になったところ
- 前半のテンポがゆるめ
王宮での生活描写が長く、サスペンスとしてはやや緩慢に感じる人がいるかもしれない。
後半の怒涛の展開とのギャップが大きい。
🎥映像について
この作品は、静かな恐怖と人間の良心を描いた骨太な作品。
- 暗闇の演出が秀逸
主人公の視覚特性に合わせて、暗い場面が多く、光と影のコントラストが物語の緊張感を高めている。
しかし、ホラー映画であるような真っ暗な画面ではなく、青く薄暗い映像のため見づらくない。 - 広角寄りの構図
斬首シーンなど、空間の広がりを感じさせる画作りが印象的。
心理的圧迫感を映像で表現している。 - 色彩は抑えめでリアル志向
王宮の装飾や衣装は豪華ながら、全体的にトーンは落ち着いていて、リアリズムを重視した美術設計。
以上、「梟ーフクロウー」の感想でした。


コメント