- 公開:2021年12月3日
- 上映時間:118分
- 制作:イギリス
- 監督:J・ブレイクソン
- 視聴方法:U-next
キャスト
- ロザムンド・パイク(マーラ役)
- ピーター・ディンクレイジ(ローマン役)
- エイザ・ゴンザレス(フラン役)
- ダイアン・ウィースト(ジェニファー役)
- クリス・メッシーナ
- イザイア・ウィットロック・Jr
- メイコン・ブレア
あらすじ(ネタバレなし)
主人公は法定後見人として高齢者の生活を支援する女性マーラ。
完璧なケアを提供する彼女の仕事ぶりは裁判所からも高く評価されるが、
ある資産家の老女を担当したことをきっかけに、予想外の展開が巻き起こるサスペンスドラマ。
以下、ネタバレあり
あらすじ(ネタバレあり)
🟩起:完璧なケアの裏に潜む悪意
マーラ・グレイソンは、裁判所から信頼される法定後見人。
判断能力が不十分とされた高齢者の財産管理を任され、表向きは「完璧なケア」を提供する優秀な専門家。
しかしその実態は、合法的に高齢者の資産を搾取する悪徳後見人だった。
マーラは女医カレンと結託し、認知症の虚偽診断書を作成。
次のターゲットとして選んだのは、身寄りのない資産家ジェニファー・ピーターソン。
裁判所の決定を得て、マーラはジェニファーを強制的に施設へ入所させ、彼女の家や財産を次々と売却していく。
順調に進む詐欺ビジネスの中、マーラはジェニファーの貸金庫から大量のダイヤモンドを発見するが、それが盗品である可能性に気づき始める。。
🟨承:思わぬ敵の登場
ェニファーの資産を奪ったことで、マーラはロシアン・マフィアの怒りを買う。
ジェニファーは実はマフィアのボス・ローマンの母親だった。
ローマンは弁護士を通じてジェニファーの解放を要求するが、マーラは強気に拒否。
現金での取引も拒み、命の保証はないと警告される。
マーラはジェニファーの正体を探るが、施設で薬漬けにされた彼女は「あの子が来る」とだけつぶやく。
一方、パートナーのフランは調査の末、ジェニファーが実は1949年に死亡していた人物であり、現在のジェニファーはなりすましであることを突き止める。
事態は急展開し、女医カレンが殺害され、マーラ自身も拉致されて湖に沈められる。
だが、マーラは奇跡的に脱出し、フランと共に反撃を開始する。
🟥転:逆転と取引
マーラはローマンの車のナンバーを手がかりに居場所を突き止め、彼を薬で眠らせて病院に送り込む。
そこでマーラはローマンの法定後見人となり、彼の命と財産を握る立場に。
ローマンはマーラの要求通り1000万ドルを支払い、母親とダイヤモンドを取り戻す。
だが、マーラの能力を認めたローマンは、彼女にビジネスパートナーとしての提案を持ちかける。
二人は手を組み、後見人制度を利用した詐欺ビジネスを拡大。
マーラは一躍時の人となり、テレビ出演や企業化としての成功を手にする。
表向きは完璧なキャリアウーマン、裏では冷酷な詐欺師としての顔を持つマーラは、勝者としての人生を歩み始める。
🟦結:代償
成功を手にしたマーラは、テレビ出演後に車へ乗り込もうとした瞬間、かつて彼女のやり口によって母親との面会を禁じられた男に銃撃される。
男はマーラの冷酷な行為に恨みを抱いており、復讐のために彼女を狙っていた。
マーラはフランの腕の中で倒れ、物語は幕を閉じる。
勝者としての人生を築いたマーラだったが、その代償はあまりにも大きかった。
映画は、資本主義社会の「勝者か敗者か」という二元論を皮肉りながら、法制度の隙間を突いた人間の欲望と、その末路を描いている。
マーラの「私は子羊ではない、雌ライオンだ」という冒頭とラストの独白が、彼女の生き様とその結末を象徴している。
感想(ネタバレあり)
めちゃくちゃ面白かった!
序盤は「え、そんなにゴリ押しでいくの…?」と不安になるほど強引な展開で、もっとスマートな法廷劇を期待していた分、少し拍子抜け。で
も、そこからの怒涛の展開がすごい。
詐欺師 vs ギャングのフルパワー同士のぶつかり合いが始まってからは、目が離せなくなった。
主人公が頭の切れる女性だからこそ、法定後見人制度という複雑な仕組みを悪用できたのだろうけど、それでもここまで肉弾戦や一か八かの賭けに発展するとは予想外。
知能戦から暴力、そして心理戦へと移り変わる展開がクセになる。
ラストまで緊張感が途切れることなく、しっかり楽しめた。
言葉にするのは難しいけれど、観終わったあとに「これぞイギリス映画だな」と感じる空気感が残る。
冷たさと皮肉、そして妙な爽快感が同居している。
万人に勧められるタイプの映画ではないかもしれないけど、映画好きならぜひ観てほしい。
ジャンルの枠を超えた異色作で、観てよかったと思える一本だった。
✅魅力に感じたところ
- 主演のロザムンド・パイクの圧倒的な演技力
冷酷で野心的な主人公マーラを演じるロザムンド・パイクがとにかく強烈
「ゴーン・ガール」でも見せた「いかにも怖い女」の魅力が全開で、観客を不快にさせながらも目が離せない存在感を放っている - 倫理観を揺さぶるストーリー構成
「法定後見人制度」を悪用するという設定がリアルで、現代社会の闇を鋭く突いている
善悪の境界が曖昧な登場人物たちが繰り広げる駆け引きは、観る者に「正義とは何か?」を問いかけてくる - 予測不能な展開とブラックユーモア
サスペンスに加えて、皮肉の効いたユーモアが随所に散りばめられていて、ただの犯罪劇では終わらないところが魅力的
敵対していた人物と手を組む展開など、どんでん返しが効いていて飽きさせない
❓気になったところ
- 主人公への共感の難しさ
マーラの行動は終始冷酷で、観客が感情移入しづらい
私なら最初にお金を積まれたところでラッキー☆と終わらせるけど、そこで引いていたら後々消されたりしていたのかな…? - 後半のテンポとリアリティの崩れ
中盤までは緊張感があるが、後半はやや展開が急ぎすぎて、現実味が薄れる瞬間もある
特にマーラがマフィアと手を組んでビジネスを拡大するくだりは、ややご都合主義感がある
その前の偽装自殺も、ちゃんと見届けないマフィアのヌルさに少し疑問を覚えた
🎥映像について
- スタイリッシュで冷たい色調
映像は全体的にクールなトーンで統一されていて、マーラの冷徹な性格や物語の不穏さを視覚的に強調していて鑑賞者の感情を操作している - 構図とライティングの計算が緻密
画面の構図が緻密で、マーラの孤独や支配欲を映像で語る場面が多い。
特に施設や裁判所のシーンでは、無機質な空間が彼女の冷酷さを際立たせている - 衣装と美術のセンス
マーラのファッション(スーツ、髪型、アクセサリーなど)は「成功者」としての仮面を象徴していて、映像美の一部として機能している
以上、「パーフェクト・ケア」の感想でした。
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