作品情報
- 公開:2021年07月16日
- 上映時間:112分
- 制作:中国
- 監督:サム・クワー
- 視聴方法:U-next
キャスト
- シャオ・ヤン(リー・ウェイジエ役/父)
- タン・ジュオ(アユー役/妻)
- ジョアン・チェン(ラーウェン警察局長役)
- フィリップ・キョン(ドゥポン議員役)
- チョン・プイ(食堂の主人ソン役)
- オードリー・ホイ(ピンピン役/長女)
- ビアン・ティエンヤン(スーチャット役/不良高校生)
あらすじ(ネタバレなし)
タイで暮らす映画好きの父リーは、家族と平穏に過ごしていたが、娘に起きたある事件をきっかけに、映画の知識を駆使して家族を守るための大胆な計画を立てる。
緊迫感と心理戦が交錯するサスペンスドラマ。
以下、ネタバレあり
あらすじ(ネタバレあり)
🟩起:平凡な家族と映画好きの父
タイに暮らす中国人のリー・ウェイジエは、小さなネット会社を営みながら、妻アユー、高校生の娘ピンピン、幼い娘アンアンと平穏な日々を送っていた。
映画マニアでもあるリーは「映画を1000本観れば、世界に分からないことはない」が信条で、日常の中でも映画の話を熱く語る。
そんなある日、ピンピンがサマーキャンプに参加したいと申し出る。
高額な参加費に戸惑いながらも、娘のために費用を工面するリー。
キャンプから帰ってきたピンピンは様子が変わり、家族を避けるようになる。
実はキャンプ中、警察局長ラーウェンの息子スーチャットに薬を盛られ、暴行されていたのだった。
その様子は動画で撮影され、スーチャットはピンピンを脅迫。
権力者の息子である彼は、過去の犯罪も揉み消されてきた問題児だった。
🟨承:偶発的な殺人と家族の決断
スーチャットから再び呼び出されたピンピンは、夜中に倉庫へ向かう。
異変を察した母アユーも後を追い、スーチャットと揉み合いになる。
ピンピンは彼のスマホを壊そうと農具を振りかざすが、誤ってスーチャットの頭に当たり、彼は死亡してしまう。
出張から戻ったリーは、泣き崩れる家族から事情を聞き、警察に通報すれば娘が逮捕されると判断。
アユーは死体を自宅隣の墓地に埋めていた。
リーは家族を守るため、これまで観てきた犯罪映画の知識を駆使し、完全犯罪を計画。
スマホは粉砕機で破壊し、車は湖に沈める。
さらに家族の証言を一致させるため、尋問対策の練習を徹底。
だが、スーチャットの車に乗る姿を悪徳警官サンクンに目撃されてしまい、リー一家に疑いの目が向けられる。
🟥転:警察の追及と記憶操作のトリック
スーチャットの行方不明を受けて、警察は捜査を開始。
サンクンの証言をもとにリー一家を尋問するが、事前に練習された証言に矛盾はなく、追及は難航する。
湖から車が発見され、警察局長ラーウェンは事件性を確信。
リーの映画コレクションを調べる中で、映画『悪魔は誰だ』のトリックに着目。
リーは人々の記憶と時間感覚を操作し、アリバイを構築していたのだ。
ラーウェンは証拠を探すが決定打は見つからない。
そんな中、スーチャットの友人が暴行動画を警察に提出。
ラーウェンはピンピンの関与を確信し、リー一家を拘束。
父が暴力を受ける姿に耐えられなくなったピンピンは、殺害を自白してしまう。
墓地の掘り返しが始まり、住民たちは警察の強引な捜査に怒りを爆発させる。
🟦結:真実と犠牲、父の選択
墓地を掘り返すと、そこにスーチャットの遺体はなく、動物の遺体が埋まっていた。
住民たちは警察の不手際に激怒し、暴動が発生。
ラーウェンと議員デゥポンは責任を問われ辞任する。
ラーウェンはリーに謝罪し、息子を失った母としての苦しみを語る。
リーはその言葉に心を動かされ、すべての罪を自分が背負うことを決意し、自首する。
逮捕されたリーには、家族を守るための行動だったと同情の声が集まり、釈放を求める運動が広がる。
刑務所で棺桶を見つめるリーの姿が映し出される。
この棺桶は、リーが以前語っていた「映画の中で脱獄に使われた道具」であり、 彼が語っていた『ショーシャンクの空に』の脱獄トリックを思わせる演出である。
彼の中で新たな計画が始まることを示唆するラストとなる。
映画の知識を武器に、家族を守るために戦った男の物語は、善悪を超えた「父の覚悟」と「家族の絆」を深く問いかける。
感想(ネタバレあり)
主人公が映画好きなので、映画ネタが出てくるたびにニヤニヤしてしまった。
「偽りなき者(主演:マッツ・ミケルセン)」やらセブン「(主演:ブラット・ピット)が出てきて、知ってる知ってるー!良い映画だよね!となった。
この父親と語りたい。
「悪魔は誰だ(韓)」は知らないので見てみようと思う。
しかし、そのアリバイ作りはさすがにガバガバすぎると思う…。
バスで印象付けたそのおじさんは、毎日乗っているわけじゃないはず。
ケーキ屋の店員やムエタイの売り子のシフトは?
みんな、きっと「確かに来たけどその日じゃないよ」となるのではないだろうか。
さすがに警察に証人として呼ばれたら正確性を疑うと思うけど、日本人と感覚が違うのかな?
記録も出勤簿とか適当なのだろうか。
娘の自白以外でもつじつまが合わなくて整合性が取れなくなっちゃうと思うけど‥と納得が出来なかった。
まあそこ自体が「映画好きなだけの男」で、ちゃんと犯罪計画を練ることができる凶悪性はない人間という事なんだろうし、「映画好きなだけじゃ無理よ」という警鐘なのだろうけど。
✅魅力に感じたところ
- 映画知識を活かした完全犯罪の構成が秀逸
主人公リーが過去に観た映画のトリックを応用して、アリバイ工作や証拠隠滅を仕掛ける展開は、映画好きにはたまらない設定。
「ショーシャンクの空に」などのオマージュも巧妙。 - 家族の絆と父の覚悟が胸を打つ
娘を守るために罪を背負う父の姿が、善悪を超えた”人間の選択“として描かれている。
自首という決断も、家族の未来を守るための犠牲として説得力がある。 - 社会派の視点が織り込まれている
警察の横暴、公権力の腐敗、市民の怒りなど、タイ社会の構造的問題を背景に描いており、単なるスリラーに留まらない深みがある。 - 記憶と時間の操作というテーマ性
人間の記憶の曖昧さを利用したトリックが物語の核になっており、観客自身も「何を信じるか」を問われる構造になっている。
❓気になったところ
- 倫理的なモヤモヤが残る
嘘を重ねて逃げ切る展開に対して、「それでいいのか?」という疑問が残る。
特に子どもに尋問練習をさせるシーンは切なくもあり、賛否両論ありそう。 - 警察の描写が過剰に暴力的
市民に銃を向ける、暴力で脅すなど、タイ警察の描写が極端で「本当にこんななの?」と疑問を持った。 - ラストの棺桶演出が唐突に感じる
自首したはずなのに脱獄を匂わせるラストは、余韻としては面白いが、物語の整合性としては「結局どうしたいの?」と感じてしまった
🎥映像について
この作品は、「映画好きの父が映画で家族を守る」という一見ユニークな設定の裏に、社会批判と人間の本質への問いが潜んでいます。
- リアルで湿度のある空気感
タイの街並みや生活感が丁寧に描かれており、映像から「現地の温度」が伝わってくるのが素晴らしい。
特に雨や夜のシーンは緊張感を高める。 - 映画オマージュの視覚演出が巧み
「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」のポスターが背景に映るなど、映画好きならニヤリとしてしまう小ネタが散りばめられている。 - 静と動のバランスが良い
尋問シーンや家族の会話は静かに、暴動や掘り返しの場面は激しく。
緩急のある映像設計が、心理的な緊張をうまく支えている。


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