メッセージ(Arrival)/2017

4.0

作品情報

キャスト

  • エイミー・アダムス(ルイーズ・バンクス役/言語学者)
  • ジェレミー・レナー(イアン・ドネリー役/物理学者)
  • フォレスト・ウィテカー(ウェバー大佐役/軍の作戦指揮官)
  • マイケル・スタールバーグ(ハルペーン捜査官役/政府高官)
  • マーク・オブライエン(マークス大尉役/現場担当)
  • ツィ・マー(シャン上将役/中国人民解放軍の指導者)
  • アビゲイル・ピニョフスキ(ジュリア・スカーレット・ダン役/ルイーズの娘)

あらすじ(ネタバレなし)

突如、地球に現れた謎の宇宙船。
言語学者ルイーズは、異星人との対話を託される。
彼らは何を語り、なぜ今、地球に来たのか…人類の未来を左右する「言葉」の謎に迫る。

以下、ネタバレあり

あらすじ(ネタバレあり)

🟩起:異星人との接触

突如、地球上の12か所に巨大な宇宙船が出現する。
アメリカ政府は言語学者ルイーズ・バンクスを招集し、物理学者イアン・ドネリーと共に、モンタナ州に降り立った宇宙船との接触任務に就かせる。
宇宙船内部には2体の異星人“ヘプタポッド”が現れ、墨のような物質で円形の文字を描く。

ルイーズはコミュニケーションを取り彼らの言語を解読しようと試みるが、政府や軍は「彼らの目的は何か」を早急に突き止めるよう圧力をかける。
世界各国もそれぞれの宇宙船と接触を始め、情報共有が進む中、各国の緊張が高まっていく。
ルイーズは異星人との対話を重ねるうち、彼らの言語が時間の認識に影響を与える可能性に気づき始める。

🟨承:言語と時間の変容

ルイーズはヘプタポッドの言語を解読する過程で、奇妙なビジョンを見るようになる。
そこには幼い娘との記憶のような映像が含まれていたが、彼女には娘がいない。
異星人の言語は、時間を非線形に認識する構造を持ち、習得者の脳にもその影響を及ぼすことが判明する。
各国は「武器を提供する」というメッセージを脅威と解釈し、中国やロシアは軍事行動を準備し始める。
アメリカ国内でも宇宙船への攻撃を主張する声が強まり、ルイーズたちは任務から外されそうになる。
ルイーズは異星人との直接対話を試み、彼らが「武器」と呼ぶものが“言語そのもの”であり、未来を知る力を人類に与えるために来たことを理解する。

🟥転:新しい記憶と選択

世界の緊張が高まる中、中国は宇宙船への攻撃を決定。
ルイーズはヘプタポッドの言語によって得た未来の記憶を利用し、まだ起きていない中国のシャン上将との会話を“思い出す”。
その記憶の中で、シャン上将は自分の妻の最後の言葉をルイーズから聞いたことが和平の鍵だったと語っていた。
ルイーズはその言葉を使ってシャン上将に直接連絡を取り、攻撃を中止させる。
これにより各国は情報共有を再開し、宇宙船は地球から去っていく。
ルイーズは自分が見ていた娘との記憶が“未来”であることを理解し、その未来が避けられないものであることも受け入れる。

🟦結:受け入れる未来

宇宙船が去った後、ルイーズはイアンと関係を築き始める。
彼女は未来に起こる出来事…それは娘ハンナの誕生と病死、イアンとの別離。
それをすでに知っているが、それでもその人生を選ぶことを決意する。
彼女は未来を知りながらも、愛と喪失を受け入れる道を選び、静かにその運命を歩み始める。

感想(ネタバレあり)

開始数分でもう宇宙人到来!
話が早くて助かります。
ただ、その分ルイーズの背景が語られていない…という懸念点があったものの、物語が進むにつれてそれが逆に機能してきたので素晴らしい。

「コミュニケーションなんか取っていて、それが早いのか?」
「これが一番早い。誤解が生じないように。」
「しかし誤解された方は、結果的に、進歩した種族に追いやられたぞ。」

各国の対応の仕方にバラつきがあったのが面白い。
中国人は麻雀牌で意思疎通を試みた。
ロシアは秘密を守るために自国の科学者を射殺した。
日本はどうするだろうか。
もしかしたら、イラストとかを使ってコミュニケーションを取るかもしれない。
日本っぽいとしたらね。

時系列ごちゃごちゃ系ではあるものの、起こっているのは現実。
作りが面白い。
改変された未来の記憶が頭に入ってきて、それを現在の自分が実行し、未来を変える。
発想は面白いけど、仕組みを考えるのが大変。
それをワンパンチで説得させるのが、「未来を見ることが出来る宇宙人の能力」。
力業だけど、それでもしっかりストーリーが成り立っているから良い。

しかしなぜ宇宙人は慈善活動をしに地球に来たのだろう?
もしかしたら、「つまらなかったから」かもしれない。
自分たちと同じくらいの高等知能を持つ生物がいないから、遊び相手を作りたかったのかも。
未来が分かってしまったら、つまらないかもしれない。

「人生の始まりから終わりまで分かったら?」『自分の気持ちをもっと伝えたいと思うかも』
もしかしたら、イアンがそう考えたように、宇宙人も、ただただ「伝えたい」だけだったのかも。

私もいつか言いたい。
「生きていて驚いたのは、彼ら宇宙人に出会ったことではなく、君に出会えたこと」。

この作品は、SFの面白さもありつつ、セリフや考え方が綺麗な作品だなと思った。

✅魅力に感じたところ

  • 言語と認知のテーマ性
    サピア=ウォーフの仮説をベースに、「言語が思考を形づくる」という哲学的テーマをSFに落とし込んでいる。
  • 未来と時間の構造の逆転
    主人公が宇宙人の言語を習得することで未来を知覚するようになるという設定が斬新で、観客に深い余韻を残す。
  • 2周目以降の楽しみ方
    冒頭のシーンの意味がラストで明かされる構造により、再鑑賞で新たな発見がある。

❓気になったところ

  • 展開の静けさと退屈さ
    SFとしては動きが少なく、私は好きだけど物足りなく感じる人もいるかも。
    宇宙人とのファーストコンタクトという題材にしては緊張感が若干薄め。
  • 恋愛描写の不自然さ
    主人公ルイーズの感情が見えづらく、夫となるイアンとの関係性が唐突に感じられる。
  • 音響の過剰さ
    不安を煽る音響が多用されていて、物語の静けさとバランスが不安定。

🎥映像について

この作品は、言語と時間の概念を深く掘り下げた哲学的SFに加え、映像美を追求した作品。

  • 宇宙人の言語表現が水墨画風
    タコ型の宇宙人が触手で描く円形文字は、水墨画のような美しさと禅的な静けさを感じさせる。
  • モノトーンでドキュメンタリー風の色調
    全体的に抑えた色使いで、現実感と静謐さを両立。
    空や雲の描写が詩的で、エンドロールもとても美しい。
  • 音楽との連携
    ズシンと響く音響が映像と連動し、宇宙人との交信の神秘性を高めている。

以上、「メッセージ」の感想でした。

コメント

タイトルとURLをコピーしました