作品情報
- 公開:2025年03月28日
- 上映時間:139分
- 制作:アメリカ
- 監督:ポン・ジュノ
- 視聴方法:U-next
キャスト
- ロバート・パティンソン(ミッキー・バーンズ役)
- マーク・ラファロ(マーシャル役/指揮官)
- トニ・コレット(イルファ役/マーシャルの妻)
- スティーヴン・ユァン(ティモ役/ミッキーの友人パイロット)
- ナオミ・アッキー(ナーシャ役/ミッキーの恋人)
- アナマリア・ヴァルトロメイ(カイ役/ミッキーの同僚女性)
- パッチー・フェラン(ドロシー役/眼鏡の研究員女性)
- キャメロン・ブリットン(アーカディ役/技術支援者の男性)
あらすじ(ネタバレなし)
死ぬたびに新しい体で再生される”使い捨て労働者”ミッキー。
過酷な任務に挑む中、ある日、自分と同じ姿の”もう一人のミッキー”が現れる。
存在の意味が揺らぐ中、彼は何を選ぶのか。
以下、ネタバレあり
あらすじ(ネタバレあり)
🟩起:使い捨て労働者としての契約
地球で借金を抱えたミッキー・バーンズは、友人ティモとともに惑星ニブルヘイムへの移住計画に志願する。
移住計画を指揮するのはケネス・マーシャル議員とその妻イルファ。
ミッキーは契約書をよく読まずに「エクスペンダブル(使い捨て人間)」として登録される。
エクスペンダブルは危険任務に従事し、死亡するたびに記憶を引き継いだ新しい肉体で再生される。
宇宙船での旅の中、ミッキーはパイロットのナーシャと親しくなり、恋愛関係に発展する。
4年後、宇宙船はニブルヘイムに到着し、開拓任務が始まる。
ミッキーは過酷な環境下で任務をこなしながら、再生を繰り返す生活に疑問を抱き始める。
🟨承:もう一人のミッキーの出現
ある任務中、ミッキー17はクリーパーと呼ばれる先住生物に捕食され、基地では彼の死亡が確認される。
再生装置が起動し、ミッキー18が生成される。
ミッキー17はクリーパーに捕食されることなく、穴の出口まで引きずられて放り出される。
彼は自力で基地に戻るが、すでにミッキー18が活動を開始しており、同一人物が2人存在する事態となる。
これはエクスペンダブル(使い捨て労働者)制度によると、人格の重複・記憶の競合・指揮系統の混乱を招くことから規約違反に値するため、基地の指揮官マーシャルは排除を命じていた。
ミッキー17は身を隠しながら状況を探る中、マーシャルに招かれた食事会に出席し、そこでカイという女性と出会う。
カイはミッキーに優しく接し、処分されるのを防ぐ。
ミッキー17が部屋に戻ると、ナーシャがミッキー18と親密に過ごしていた。
ミッキー17は状況を打ち明け、ナーシャはすんなり受け入れる。
その後、重複存在がバレたミッキー17、18はナーシャと共に拘束される。
ティモが密かに部屋に侵入し、かつての借金相手がこの惑星に向かっていると告げる。
赦しの条件として「人間が切り刻まれて死ぬ映像」を要求され、ティモはミッキー17を切り刻もうとする。
ミッキー18が機転を利かせて介入し、2人は命を取り留める。
🟥転:交錯する時代と血縁の真実
ミッキー17とミッキー18の存在が基地内で公然となり、マーシャルは2人のうちどちらかを排除するため、公開処刑任務を命じる。
彼は2人に対し、惑星の先住生物クリーパーのしっぽを100本集めてくるよう命令する。
これは事実上の死刑命令であり、極めて危険な任務だったが、2人は従うしかなかった。
ドロシーから開発途中の翻訳機を渡されたミッキーたちは協力して任務に向かい、クリーパーと交信をしながら生態を観察する中で、彼らが人間に対してそもそも敵意を持たないこと、知性を備えていることに気づく。
探索の途中、ミッキー17とミッキー18はひときわ大きなクリーパーに遭遇する。周囲のクリーパーが敬意を示すその個体は“ママクリーパー”と呼ばれ、人間の言語を理解し、意思を伝える能力を持っていた。
ママクリーパーは2人に対し、
「小さな子供が1匹、人間によって殺された。今捕まっている子供を生きて返せ。返さなければ人間は皆殺し。返したとしても1人の人間の死を」
と告げる。
ミッキー17からその内容を伝えられたナーシャがクリーパーの子供を保護し、現地に連れて現れる。
一方、マーシャルはクリーパーとの和平を演出しようとスピーチを試みるが、ママクリーパーを見つけられず、焦りからミッキー18に向けて銃を乱射する。
もみ合いの末、ミッキー18は自ら爆発装置を起動して自爆する。
その犠牲によって、クリーパー側は人間の誠意を受け取ったと判断し、全面的な報復を回避する。
🟦結:共存と選択の余地
爆発の衝撃でマーシャルは巻き込まれて死亡し、彼の支配体制は終焉を迎えた。
6か月後の春。
基地ではミッキー17の存在が正式に認められ、ナーシャとともに新たな秩序の構築に取り組む。
ティモは借金の相手の手下に襲われ、無罪を勝ち取った。
マーシャル養護派と反対派の政治的な戦いが続き、ナーシャは委員選で圧勝で当選し、代表になり素晴らしい演説をした。
クリーパーと翻訳機を通しての交信で、人間絶滅の脅しはハッタリだったと知った。
死んだはずのイルファがマーシャルを生成しているところに出くわした時には、「もし18ならどうする?」と考えたりもした。
ミッキーは「18」ではなく、「ミッキー・バーンズ」という名前を取り戻した。
感想(ネタバレあり)
タイトルがミッキー17だから、今死にそうな17が生き延びる話だよね、ということはすぐに分かりとてもワクワク。
映画館で予告を見てとても楽しみにしていた作品。
根本の着想自体は「月に囚われた男」みたいな感じだろうな、と思っていたけど、実際にストーリーが始まってみると、その”仕組み”自体がメインというわけではなく、それを”前提として”ストーリーが進んでいくので、思っていたワンランク上で安心。
ミッキーはミッキーで、意外にも個体ごとに性格の差があるんだ。
最初に18が出てきた時には「なんか性格違う!人が変わったみたい。そんなんアリ?」と思ったけど、後からの説明で納得した。
大人ベースでのコピーだけど性格って変わるんだなあ…
もちろん検証のしようがないけど、そういうこともあるのかな。
しかし、怖いのは、「17が主人公」であり、「オリジナルはどうなったの?」という点。
見逃していなければ、オリジナルが明確に「死んだ」シーンは無かったはず。
「死ぬのよ」と言われて拳銃みたいなもので自殺のように死んでいったけど、それが本当に「死」なのかは不明。
都合のいい考え方をすると、コピーを生み出すためにオリジナルは「凍結」のような形で残っているのではないかと考えた。
しかし、たぶん、死んだんだろうな。
だから、17の性格はオリジナルの性格とは必ずしも(というかほぼ100%)一致しないということ。
本当のミッキーはもっともっと気弱かもしれないし、18に似ているかもしれないし、超楽天家だったかもしれない。
分かるのは、「友達と一緒に借金を背負った」という事実のみ。
コピーに生殖能力はあるのだろうか?
ミッキー17が食べているステーキ、なんかやたら赤いけど…何の肉?と思っていたらやっぱりヤバい肉かい!
カイの出されていた肉は普通に高級フレンチみたいで、映し出された時に「あー…」となった。
成長ホルモンを使っている人工肉とは…
何でもかんでも、実験実験。
コピーはとことんモルモット。
倫理的には全くのNGだけど、使い捨ての人間が有れば実験がどんどん出来るのは確かに理解できる。
殺してあげるのが一番の「人道的」、そうかもしれないね…。
数年前にアニメ化実写化した亜人なんかも同じように苦しんで実験台になっていた。
また、シャマラン監督の「オールド(2021)」なんかも、少し違うが面白かった。
「死ぬのは最悪の感覚だ」とミッキー17は言ったけど、死ぬ感覚は元データにはないよね??
オリジナルが死んだところからの新しい記憶なのでは?
しかし、ナーシャとは、オリジナルが死んでから出会っているはずだから、ミッキー1、2、3、…全ての記憶を残している可能性あり?!
死ぬ直前のセーブデータまで引き継いでいるという事かな?
そうなると、「死ぬのは慣れない」というのはなんかおかしい感想。
だって、持っていたとしても「死ぬ瞬間の記憶」はオリジナルの物だけだから。
たかが1回で「慣れ」という発想にはならないから、1~16まで全部の死んだ記憶があるのだろう。
しかし、そうなると18は「17が死んでいない」事を知っていた??
あいつは自分がコピーとして生まれた段階で、17か18どちらかが死ななければならないことを既に知り、受け止めていたのかもしれない。
クリーパーはミッキー17を食べなかった。
あっ、これは何か後半に何かあるぞ…どこかでどれかのミッキーがクリーパーを助けて恩義を感じられてるな…と思っていたが、シンプルに人間を食べる種ではなかった。
前提を疑えなかったのが悔しい!
ハッタリをかますのは人間だけじゃない、そうなんだよね(笑)
それも「前提を疑えなかった」ことの一つ。
勢いに飲まれて、ひれ伏すしかなくなってしまった17と一緒。
37Kビデオというのに少し笑った。
すげー進化だ。
日本では今、8Kのテレビもないよお。。。
✅魅力に感じたところ
- ロバート・パティンソンの演技力
ミッキー17とミッキー18の演じ分けが見事で、表情や話し方だけでどちらか判別できるほどだった。 - ブラックユーモアと社会風刺
使い捨て労働者制度を通じて、現代の労働搾取や権力構造への皮肉が込められている。
ホロコーストや植民地主義を連想させる描写もあった。 - ポン・ジュノ監督らしい作家性
社会派テーマとエンタメ性の融合が絶妙で、監督の癖が好きな人には刺さる。
❓気になったところ
- 説明過多なモノローグ
若干ナレーションに頼りすぎているため、テンポを損なう場面がある。
たまにボーっとしてしまった。 - 一部のシーンの不要感
「そのシーンいる?」と思うような場面があり、構成にムラを感じるという声も。
中盤でティモから「人が死ぬ映像を送ったら許してもらえる」という部分がSFとの整合性を欠いているように感じた。
また、ママクリーパーを探して乱射するシーンが、マーシャルの目的と大きく異なり、なぜそのような行動に至ったのか不明瞭。 - スケールの物足りなさ
惑星開拓という設定に対して、物語の飛距離が足りず、期待ほどの壮大さがなかった。
🎥映像について
この作品は、寒々しくて不気味、それでもどこかユーモラスな作品。
- ルックは及第点
SF映画としてのビジュアルは安定しており、退屈はしないが一方で驚きも少ない印象。 - クリーパーの造形が印象的
“キモかわ”と評されるクリーパーのデザインがアクセントになっており、映像的な記憶に残る。 - 爆破や惑星描写の質感
ビッグバジェットにしては控えめながら、惑星の寒々しさや閉塞感を映像でしっかり表現している。
以上、「ミッキー17」の感想でした。


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