いまを生きる(Dead Poets Society)/1990

4.0

作品情報

  • 公開:上映日:1990年03月24日
  • 上映時間:128分
  • 制作:アメリカ
  • 監督:ピーター・ウィアー
  • 視聴方法:Netflix

キャスト

  • ロビン・ウィリアムズ(ジョン・キーティング役/新任の英語教師)
  • イーサン・ホーク(トッド・アンダーソン役/内気な学生)
  • ロバート・ショーン・レナード(ニール・ペリー役/演劇に情熱を持つ学生)
  • ジョシュ・チャールズ(ノックス・オーバーストリート役/恋に落ちる学生)
  • ゲイル・ハンセン(チャーリー・ダルトン役/反抗的な学生)
  • ディラン・カスマン(リチャード・キャメロン役/保守的な学生)
  • アレロン・ルッジェロ(スティーヴン・ミークス役/理系肌学生)
  • ジェームズ・ウォーターストン(ジェラルド・ピッツ役/控えめな学生)
  • ノーマン・ロイド(ノーラン校長役)
  • カートウッド・スミス(ニールの父役)

あらすじ(ネタバレなし)

名門寄宿学校に赴任した型破りな英語教師キーティング。
彼の授業は、生徒たちの心に火を灯し、閉ざされた日常に小さな波紋を広げていく。
やがてその波紋は、予期せぬ変化を呼び起こすことに…。

以下、ネタバレあり

あらすじ(ネタバレあり)

🟩起:新任教師と生徒たち

1959年、米国バーモント州の名門寄宿学校ウェルトン・アカデミーに、新任の英語教師ジョン・キーティングが赴任する。
彼は型破りな教育方針を持ち、伝統と規律を重んじる校風の中で、生徒たちに詩の力と「自分の言葉で生きること」の重要性を説く。
生徒のニール、トッド、ノックスたちは、キーティングの授業に刺激を受ける。
彼らはキーティングの過去を知り、かつて彼が所属していた「死せる詩人の会」の存在を知る。
ニールたちはその活動を復活させ、夜の森で詩を朗読し、自由な精神を育み始める。
生徒たちはそれぞれの内面に変化を感じ、学校生活に新たな視点を持ち始める。

🟨承:それぞれの目覚め

ニールは演劇への情熱を深め、学校の舞台で『真夏の夜の夢』の主役に抜擢される。
しかし、厳格な父親は進路を医学に限定し、演劇への参加を禁じる。
ニールは葛藤しながらも舞台に立ち、観客の喝采を浴びる。
一方、トッドはキーティングの指導のもとで自己表現の力を得て、詩を朗読する勇気を持つようになる。
ノックスは恋心を抱いたクリスに詩を通じて思いを伝え、少しずつ距離を縮めていく。
チャーリーは校則に反抗し、校内新聞に自由を訴える記事を掲載するが、罰を受ける。
キーティングの影響は生徒たちの行動に現れ始め、教師陣や校長ノーランはその教育方針に疑念を抱くようになる。
生徒たちはそれぞれの方法で「自分らしく生きる」ことを模索し始める。

🟥転:悲劇と波紋

ニールは父親との対立に苦しみ、演劇の成功後も進路を認めてもらえず、絶望の末に自室で自ら命を絶つ。
学校は騒然となり、死の原因を探る中で、キーティングの教育方針が問題視される。
校長ノーランは調査を開始し、生徒たちに事情聴取を行う。
リチャードはキーティングの影響がニールの死につながったと証言し、他の生徒にも署名を強要する。
チャーリーは署名を拒否し、退学処分となる。
トッドを含む他の生徒たちは葛藤の末、署名をしてしまう。
キーティングは責任を問われ、学校を去ることが決定される。
生徒たちは沈黙の中でキーティングとの別れを迎えるが、それぞれの心には彼の教えが深く刻まれていた。

🟦結:別れと継承

キーティングが教室に私物を取りに来た際、トッドは立ち上がり、机の上に立って「おおキャプテン、わがキャプテン」と呼びかける。
これはキーティングが授業で紹介した詩の一節であり、彼への敬意と感謝の表現だった。
続いて複数の生徒が机に立ち、同じようにキーティングを見送る。
キーティングは感動しながらも静かに教室を後にする。
校長ノーランはその様子を目撃するが、何も言わずに立ち去る。
死せる詩人の会の活動は終わりを迎えた。

感想(ネタバレあり)

超個人的な感想だけど、ニールの容姿が、うちの弟にそっくりだった。
どこからどう見ても似ていたので、思わず笑ってしまった。
そして…彼は死んでしまった。

人間が、特に10代の少年が生きるとき、いちばんの糧になるのは、たぶん「希望」なのだろう。
たとえ友達が離れていても、友達は友達だ。
新しい友達を作ることだってできる。
恋人も、きっと新しく作ることができるし、いなくても死にはしない。
でも、もし自分の中で核となる「希望」や「夢」の灯りを誰かに消されてしまったら、心は折れてしまう。
そして再び起き上がることは、とても難しいのだろう。

「死ぬ時に悔いのないよう、生きるために」
その言葉を胸に、ニールは生きたかったはずだ。
しかし彼はそれを叶えられず、生きるのをやめてしまった。

矛先を向けられるキーティング先生。
その構図は、社会においてしばしば見かけるものだ。
それで、リチャードの心は痛まないのだろうか。
たぶん「これが正義」と信じて疑わないのだろう。
もちろんリチャードにも彼なりの考えがあって、彼視点のドラマであればまた違った感想を抱くに違いないので、彼の人格がおかしいとは思わない。
人には人それぞれの常識や価値観があるだろう。
しかし、「他の少年たちの心や葛藤に同調できない、空気を読めない、仲間意識を持てない」というのは、一番厄介なのかもしれないなあ。
林修先生がテレビで言っていた「やる気のあるバカが一番手に負えない」というセリフをなんとなく思い出した。

ではリチャードの言わんとすることを考えてみる。
もしニールがキーティング先生の話をまともに聞いていなかった場合、彼の心の中の夢や希望は小さく小さく揺れるだけで、そのうち自然と消えてしまっていたかもしれない。
自分の核は何たるか、目を向けないまま生きていたか、はたまた「”親が容認してくれる範疇の”別の希望」を見出していたかもしれない。
親から赦してもらえない夢を、大きく育ててしまった。
しかし、親を説得し切るところまでサポートできなかった。
自ら納得して諦めるという選択肢もあるということを教えられなかった。
キーティング先生は少年たちに火をつけた良い先生かもしれないが、中途半端だったのもまた事実なのかもしれない。。
もう少し時間に余裕があれば、また違ったかもしれない。
しかし少年の1日は30歳の1日より長く厚かった。

途中、ひとりひとりの生徒を丁寧に描くシーンが入ることで、群像劇感が増し若干中だるみを感じる場面もあった。
しかし、ラスト20分の展開には圧倒された。
この一人一人の深堀りをしたことで、ニールの衝動を理解できたし、若者の脆さ、危うさを感じ取ることが出来た。

キーティングの授業自体は、なんというか、学校版の『パッチ・アダムス』とか『グッドウィルハンテキング』のような作品だなと思った。
うーん、他にもっと近い作品がある気がするけど…。

✅魅力に感じたところ

  • ロビン・ウィリアムズの演技
    キーティング役としての存在感が圧倒的で、情熱的かつ繊細な教師像を見事に体現。
  • テーマの普遍性
    自己表現、自由な思考、若者の葛藤と成長というテーマは時代を超えて共感を呼ぶ。
  • キャラクターの多様性
    生徒たちそれぞれに異なる悩みや個性があり、群像劇としての深みがある。
  • 印象的なラストシーン
    「おおキャプテン、わがキャプテン」と机に立つ場面は、映画史に残る名シーンとして語り継がれている。

❓気になったところ

  • 理想化された教師像
    キーティングの教育法が現実離れしている。
  • 一部キャラクターの描写不足
    ピッツやミークスなど、詩の会メンバーの背景が薄く、印象に残りにくい。

🎥映像について

この作品は、静謐な構図と自然光が、青春の揺らぎと詩情を美しく映し出す作品。

  • 自然光を活かした撮影
    寮や森のシーンでは柔らかな自然光が使われ、青春の儚さや静けさを美しく表現している。
  • 構図の工夫
    キーティングが机の上に立たせる場面など、視点の変化を映像でも強調する演出が印象的。
  • 色彩とトーン
    秋の風景や制服の深い色合いが、抑制された感情や伝統的な校風を象徴している。

以上、「いまを生きる」の感想でした。

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